「逆らえない」「上を神と崇める」……社員が訴える、不正招いた日野の“パワハラ体質”とは調査報告書を読む(1/2 ページ)

» 2022年08月04日 05時00分 公開
[濱川太一ITmedia]

 日野自動車の排ガス・燃費データ不正をめぐり、原因解明に当たった特別調査委員会が8月2日公表した報告書。そこには、「パワハラ体質」に委縮し、意欲をなくしていく従業員たちの生々しい声が記されていた。不正に至る原因の一つとして指摘されたパワハラの問題は、どの企業にとっても他人事ではない。日野の事件が教訓となるよう、報告書に記された従業員の声を見ていきたい。

日野自動車の「パワハラ体質」から企業が学ぶべき教訓とは(同社公式Webサイトより)

 3月の不正発表後、日野が原因究明に向けて設置した外部有識者らによる特別調査委員会(榊原一夫委員長)は、日野の従業員9232人を対象にアンケートを実施した。

 質問の概要は(1)不正に繋がった原因や背景は何だと考えるか(2)日野は何を変えていくべきか(3)委員会に伝えたいこと――の3点で、いずれも自由回答形式とした。

 期限までに2084通の回答(回答率22.6%)が寄せられ、調査委が「驚いた」と指摘するのが、パワーハラスメントに関する指摘の多さだった。具体的に挙げていきたい。

上(神様)が決めたことが絶対

私は、中途入社であるが、前職に比べると個人的意見が言いづらい、喧嘩口調といった社風があると痛感した。これでは、言いたいことも発言できず上司の言いなりになるしかないと思う。(原文ママ、以下同)

日野自動車の技術者は真面目で愚直ないっぽう、声の大きな社員(役員、上司)の言うことに流される。非常に残念なことに、日野自動車で声の大きな社員は技術力が弱いことが多い印象であり、達成根拠の希薄な目標を一方的に技術者に押し付けている傾向が強いと考える。

8月2日の記者会見で謝罪した日野自動車の小木曽聡社長(オンライン会見より)

先輩が新人にする教育は高圧的で、脅迫することで、『上には逆らえない』を植え付けさせるものであったと感じる。このような教育もあってか日野自動車は上の意見は絶対で、神様の様に崇め、上(神様)が決めたことが絶対であり、未達成はありえない風土が形成されていった様に考えられる。

 「喧嘩口調といった社風」「声の大きな社員に流される」「教育は高圧的」――。従業員の率直な言葉からは、威圧的な雰囲気で物が言いにくく、役員や上司を絶対視する社内の様子が手に取るように見えてくる。2003年以前から20年近くに渡り、不正が正されず野放しとなった原因の一端が、ここから垣間見える。

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