真っ白なジグソーパズルが、なぜ10年で22万個も売れているのか週末に「へえ」な話(1/5 ページ)

» 2022年07月03日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

 ぜ、ぜ、絶望感に襲われた――。

 このように感じるジグソーパズルがある。その名は「宇宙パズル」(440円〜)だ。ジグソーパズルといえば、富士山や金閣寺がどーんと描かれているイメージがあるが、宇宙パズルは真っ白である。「ん? それって不良品なのでは?」と思われた人もいるかもしれないが、この業界では売れに売れている商品なのである。

何も描かれていない「宇宙パズル」が売れている

 メーカーの「やのまん」(東京都台東区)が2012年に発売したところ、累計22万個も売れているのだ。「10年間で22万個売れた」と言われてもピンとこないかもしれないが、ジグソーパズル界の常識でいえば“規格外”である。

 売れているモノで2万〜3万個、売れていないモノで500個ほど。商品の寿命は短く、ほとんどの商品が2〜3年もすれば、店頭から姿を消す。生き残ることが難しい世界の中で、なにも描かれていない宇宙パズルはなぜ支持されているのだろうか。

 その話を進める前に、宇宙パズルがどういった商品なのかを簡単に説明する。何も描かれていないことには意味があって、商品名に「宇宙」が入っていることも欠かせないワードである。

 この商品は、実際に宇宙飛行士試験で使われた“ホワイトパズル(白無地)”をモチーフにしている。宇宙飛行士に必要な精神力を鍛えるために使われていて、漫画『宇宙兄弟』でも真っ白なパズルに挑戦するシーンが描かれている。ディスカバリー(2010年)に搭乗した宇宙飛行士の山崎直子さんも、30ピースのホワイトパズルに取り組んでいたとのこと。

 そのことを知った「やのまん」は、「他社から同じような商品はまだ出ていない。であれば、当社が販売すべきでないか」ということで商品開発に至ったのである。とまあ、端折って説明するとこんな感じであるが、それだとコラムとして面白くないので、宇宙パズルができるまでの“歴史”を紹介しよう。

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