オフィスでのペーパーレス化の進行により、プリンタやインクの需要は減ると多くの人は予想していただろう。ところが、コロナ禍で在宅ワークにシフトしたことによって、家庭用プリンタとインク需要が逆に伸びて好業績を挙げているのがセイコーエプソンだ。
同社は2023年までに、日本を含む全世界の拠点で使用する電力を全て再生エネルギーで賄うという野心的な目標も発表した。社長就任3年目となるセイコーエプソンの小川恭範社長に狙いを聞いた。
――22年3月期は増収増益の好決算になったようですが。
最高利益を出した14年度の事業利益1012億円には及びませんが、22年3月期は896億円となりました。
――好決算になった要因は何でしょうか。
コロナ禍によって、在宅での印刷需要が増えたことが一番です。プリンタ、インクの需要がかなり旺盛でした。コロナ禍前はペーパーレス化により、家庭での印刷は減っていくと思っていましたが、在宅勤務が欧米を中心に定着しました。日本でもこの傾向になっています。アフターコロナでも、この傾向は元には戻らないと思います。
収益源で最も大きいのは家庭用プリンタですが、その他のインク、ロボットなども好調で、特にインクは昨年、異常なくらい売れました。
マイナス面としては、需要が強い中で1年半ほど前から物流の混乱が続き、さらに半導体不足もあって部材費、物流費が高騰したことです。これは痛手になりました。
――製品の価格対応も順調にできたようですが、その理由は何でしょうか。
モノがない状況が続いたので、一部製品の値上げと、通常なら値下げ競争が起きるところですが、値下げ競争がなかったので、収益を確保することができました。費用面ではいろいろな面で抑制してきて、これが収益面で良い方向にいきました。プリンタが不足して供給すれば売れる状況だったので、プロモーションなども抑制しました。
――紙などに文字や画像などのデータを出力するプリントヘッドの外販も好調のようですが、主にどこ向けを期待していますか。
これまで家庭用は強かったので、商業、産業向けプリンタに力を入れて、さらにプリントヘッドの外販にも注力しています。中国では低価格のプリンタからエプソンのプリントヘッドを抜き取り大判プリンタに転用するビジネスが伸びているので、プリントヘッドの外販に重点を置いて、販売後のサポートもしています。
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