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Kindleが「カップラーメンの重し」に 中国のKindle終了が日本にとっても他人事ではない理由(1/3 ページ)

» 2022年06月23日 14時54分 公開
[山谷剛史ITmedia]

 ネットの巨人Amazonのサービスがある日突然終わることは考えにくい。ところが中国ではKindleのサービスの終了が発表された。ECサイトに続くサービスの終了で、中国でAmazonの存在感はより小さなものになっていく。Amazonから発表があったのは6月2日の午後のこと。1年後の2023年6月30日に中国でのKindle電子書籍ストアの運営を停止する。

photo Kindle Paperwhite

 Amazonは決して中国市場に手を抜いたわけではない。現Xiaomiの雷軍CEOが当時運営していたECサイト「卓越網」を2004年に買収し「卓越亜馬遜」(Joyo Amazon)として中国展開を開始。中国人は横文字に弱いので、分かりやすい「z.cn」というドメインを取得するなどして利用者を増やそうとするも、アリババのECサイトの勢いに押され、業務を縮小し越境ECサイトやKindleに注力した。その一方で2015年からはAmazonは遠隔地や貧困地域の学生にKindleを無料で贈る慈善事業を行い市場にアピールしていた。

 Kindleなんて中国で利用されていたのか、という意見もあるかもしれない。雷軍氏も、バイトダンスの張一鳴前CEOも、美団の王興CEOをはじめ、主に高学歴高収入の男性に愛されていた。Kindleファンはそれなりの人数がいるので、今後は2023年6月末までストアが運営され、2024年6月末までダウンロードが可能といった「Kindleが『カップラーメンの重し』にならないための情報」がニュースサイトで発表された。日本語では使えなくなるガジェットを漬物石や文鎮などとというが、中国語ではカップラーメンの重しというらしい。

 Amazonが中国市場にKindleを投入したのが2012年のこと。売れなかったわけではなく、むしろ2016年には中国はAmazonのKindleデバイス販売市場として世界最大となったと報じられている。

 また「書伴(旧名:Kindle伴侶)」という中国のKindleユーザーの間では定番のファンサイトがある。このサイトのトラフィック的なピークは2017年で、毎日何万人もの人々がKindle関連のコンテンツを検索していた。最も読まれたコンテンツはハッキング関係関連のコンテンツで、Kindle向けフォーマット変換のコンテンツやサービスがそれに続いた。6月初頭現在、このサービスのアクセス数はピーク時の3分の1未満となっている。ちなみに過去6カ月間にアクセスしたユーザーは、大学生以上が66%、男性が75%を占めている。

 ではなぜ中国でKindleは2017年にピークに人気がしぼんでいったのか。それには日本も他人事とは思えない理由があった。

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