今なお多くの日本企業の課題である「女性の活躍」。企業のコンサルティングなどを行ってきた社労士の島麻衣子氏が、女性活躍推進法への対応のための実務のポイントや、「女性の登用が進まない」「どうもわが社は女性に優しくないようだ」と悩む企業へのアドバイスを連載の形でお届けします。
Q: 女性活躍推進法の改正で公表が義務化されたこともあり、当社でも女性管理職を増やしたいと考えていますが、女性社員がその気になってくれません。
人事部門は、女性管理職を増やしたい経営層と、管理職を希望しない現場の女性との間で板挟みです。どうしたらよいでしょうか?
A: 女性の意識改革のため、社長など経営陣からのトップメッセージのほか、キャリアアップのための研修、アンケート、個別面談などを実施することが考えられます。また、女性だけでなく現場の管理職の育成に関する意識を変えることも必要です。
企業が女性活躍を進めたくても女性が管理職になりたがらない、というのは人事担当者様からよく聞く悩みです。2018年に実施された、三菱UFJリサーチ&コンサルティング「女性管理職の育成・登用に関する調査」によれば、課長相当以上への昇進意向がある非管理職は、男性が31.1%であるのに対し、女性は15.1%と、男女で昇進意欲に大きな差があることが分かります。
それでは、なぜ女性は昇進意欲を持たないのでしょうか。前述した調査では、管理職になりたくない、なれない主な理由として
といった理由が挙げられています。
女性がこうした意識を持つ背景としては、
などがあると考えられます。
男性中心の組織である日本の企業に勤める多くの女性にとって、そもそも役付きに昇進することが将来のキャリアの選択肢に入っていないというのが実態のようです。このため、「自分は昇進の対象ではない(関係ない)、なりたくない」といった女性の意識を変えていく必要があります。
女性の意識を変えていくためには、まずは会社として女性に対してキャリアアップへの期待を働きかけることが必要です。働きかけの方法としては、社長などのトップが女性の活躍に期待するメッセージを社内に発したり、キャリアアップのための研修を実施することなどが挙げられます。
また、アンケートや個別面談を通してキャリアアップの意向を示した女性を育成することも考えられます。女性管理職を増やすということだけでなく、その女性が管理職として活躍することで、他の女性の「ロールモデル」となり、まわりの女性の意識を変えていく効果も望めます。
一方、女性だけでなく、現場の管理職の意識を変えることも必要です。仕事の割り当てや出張・残業命令のほか、評価、登用、昇進について、個々の職場で管理職の育成方針に男女差があるケースは多く、そのような職場では、女性の能力開発、管理職への登用は進みません。
現場での仕事の割り当てや育成は男女区別なく行うこと、人事的な評価は透明性を確保し、現場では性別が評価や昇進を左右することのないようにするなど、マネジメントについて管理職への指導を徹底することが必要です。具体的には研修を実施することや、管理職ミーティングなどで経営トップが指導をすることが考えられます。
これまで定着していた考え方や意識を変えることは一定の時間を要します。1回だけの研修などで終わらせることなく、継続的に取り組み、働きかけを行っていくことが重要です。
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