「専務・常務の違いは?」 場を凍らせた社外取締役の問いかけの教訓役員の改革が始まった(1/3 ページ)

» 2022年05月17日 08時30分 公開
[酒井博史ITmedia]

誰も答えられない「役位」という概念

 日本を代表するある大手企業で、社外取締役から「当社の執行役員には専務や常務がいるが、どう違うのか? 何か区別する基準があるのか?」と聞かれて、担当者が困ったという話がありました。執行役員ですら、その基準が曖昧(あいまい)なことが珍しくないなかで、専務・常務・ヒラ執行役員の違いを明確に説明できる企業が少ないことは容易に想像できます。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 第4回で触れた通り、役位は、取締役時代の構造を執行役員層にそのまま持ち込んだ結果や、昇進という形の処遇を目的に追加された結果として、社内的な序列を示すにとどまっていることも多いのが実態です。執行役員制度がそうであるように、これらの役位も各企業が独自に設定できるため、それ自体が悪いわけではありません。しかしながら、外部から見ると分かりづらいのも事実です。

 一方、日本企業のグローバル化が進むにつれ、外国籍の社員も増えるなか、役位について、なかなか現地に理解してもらえないという声をよく耳にします。また、日本企業の株主構成における海外比率もかつてより高まっているため、アクティビストなども含めた海外の機関投資家との対話も増え、執行体制に関する指摘を受けることが増えています。

 日本の企業では、長年、経営体制が役位で運用されてきたことにより、経営者の報酬が役位によって決められていることが多いです。社長であればいくら、専務ならいくら、常務ならいくら、といった感じです。

 ここに一つの問題が隠れています。

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