変革の財務経理

なぜ? “お荷物部門”を潰したら、むしろ赤字に 致命的なミスを防ぐ「責任会計」とは管理会計Q&A(1/2 ページ)

» 2022年05月13日 11時00分 公開

Q 前回のQ&Aで、配賦工数の負荷軽減のために、「配賦方法を複雑にしない」ことと、表計算ソフトに替わるツールの紹介がありました。

 しかし、そもそも配賦をしなくても、現場の業績管理と会社の利益確保を両立させる方法はないのでしょうか。

A 最近では、配賦に代わる方法として、共通費をカバーする貢献利益の目標を設定する責任会計の考え方を取り入れる企業が増えています。

解説

(1)部門別損益計算での一般的な配賦

 管理会計で部門別の業績を把握するために、一般的に作成されている表は【図表1】のようになります。この例では、全社的管理部門の固定費を、各部門の売上高で按分(あんぶん)して配賦しています。

photo 【図表1】クリックで拡大

 各部門で管理できない固定費も、全て部門に配賦されています。これにより、部門別の営業利益が算出できています。赤字部門の赤字を減らせば、会社全体の利益が確保できるので、とても分かりやすい方法といえます。

 しかし、これまで触れてきたように、各部門で管理できない固定費が、全て各部門に負担を強いることになるので、各部門で不満が生まれます。つまり、現場部門と本社管理部門との軋轢(あつれき)を生む原因になります。

 【図表1】の例では、各部門の売上高で全社的管理部門の固定費を按分して、各部門に配賦しました。しかし全社的管理部門の固定費が、売上高とはほとんと関連性がなく発生する費用であるならば、各部門の売上高を配賦基準にすることは、あまり適切とはいえないでしょう。

 【図表1】の例では、社内で最大の売り上げを上げているのに赤字になっている部門b2では、相当な不満が巻き起こるでしょう。

 それでは、全社的管理部門の固定費を各部門に均等に按分して配賦したらどうなるでしょう。それが以下の【図表2】になります。

photo 【図表2】クリックで拡大

 これなら、部門b2も納得するかもしれません。しかし、部門a2は「売上高が200,000しかないのに、50,000も共通費を配賦されたら、利益がほとんどなくなる」ということで、納得しないでしょう。部門a1は「どうやったって赤字なんだから、どうでもいいや」と諦めムードかもしれませんね。

 【図表1】と【図表2】で示した通り、「全ての部門が納得する配賦方法はない」のです。

(2)配賦の最大の致命的な欠点

 さらに、配賦による管理会計には、致命的な欠点があります。それは、配賦後の営業利益にばかり目が向いてしまい、重大な判断ミスを招きやすいということです。

 例えば、【図表2】を見た経営者は、最大の赤字部門である部門a1が「お荷物部門」だと感じるでしょう。そして「こんなに赤字になっているなら、潰してしまえ」ということで、部門a1の事業を従業員や設備ごと、他の会社に売却することが考えられます。

 部門a1の売り上げは全くなくなるだけでなく、従業員や設備ごと、他の会社に売却するので、変動製造間接費、変動販管費および部門管理可能費も発生しなくなります。

 この状態を示したのが、【図表3】です。

photo 【図表3】クリックで拡大

 【図表3】から分かることは以下です。

  • (1)会社全体の営業利益が、500の赤字になってしまった。
  • (2)部門a2の営業利益が赤字に転落するなど、他の部門の営業利益も悪化した。

 一体、何が起きたのでしょうか。

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