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「1000台売る覚悟があればいける」──飛騨高山にオープンした自作キーボード専門店「白銀ラボ」インタビューハロー、自作キーボードワールド 第12回(1/4 ページ)

» 2022年04月30日 14時00分 公開
[ぺかそITmedia]

 自分だけのキーボードを作り上げる「自作キーボード」について紹介する本連載前回に引き続き、自作キーボードの世界に関わる人たちへのインタビューをお届けする。今回伺うのは、1月に飛騨高山で自作キーボードの専門店「白銀ラボ」をオープンしたヨーキース(西洋介、@Yowkees)さん。

 自作キーボード専門店としては国内2例目の実店舗。この店で取り扱うのは、ヨーキースさん自ら開発したトラックボール付き左右分離型キーボード「Keyball」シリーズだ。自作キーボードを始めたきっかけや、飛騨高山に実店舗を開くに至った経緯について話を聞いた。

飛騨高山にオープンした白銀ラボとオーナーのヨーキースさん。手には主力商品のキーボード「Keyball61」

ぺかそ(@Pekaso)

自作キーボード「Fortitude60」作者。自作キーボードの基本から設計方法までまとめた同人誌「BUILD YOUR OWN KEYBOARDs」を執筆。

連載:「ハロー、自作キーボードワールド」

自作キーボードの作者であり、キーボード関連のニュース動画「ほぼ週刊キーボードニュース」を配信するぺかそとびあっこが、自作キーボードの世界の“入り口”を紹介していく。


第一印象は「自分ではんだ付けするの?」 自作キーボードとの出合い

── これまでももちろん生活や仕事の上でキーボードを使うことはあったと思いますが、いわゆる“キーボード沼”に入るのはいつ頃からですか。

ヨーキースさん 2020年の夏頃、感覚としてはここまで1年半ぐらいですね。それまでは一日中PCを使うような仕事を20代からやってきました。それまでは全然キーボードにこだわりが無く、何ならノートPCでずっと仕事をしていました。しかしやはり30代なかばを過ぎて非常に肩こりが気になり始めて来まして、ノートPCで仕事をするのが大変になってきました。

── 肩こりや健康問題から来たんですね。

ヨーキースさん はい、そのときに過去に見た記憶のあった、左右に分かれているキーボードを思い出し、インターネットで探してみたのですが、既製品はどれも売り切れ、生産終了になっていて「あれ、需要あると思うのにおかしいな」と思いました。さらに調べていくと今はもうキーボードを作る時代だと。そのとき秋葉原にお店(遊舎工房)があることを知りました。最初自作キーボードを見たときの第一印象は「え、自分ではんだ付けするの? 面倒くさ!」でした。

── 以前からお仕事や趣味で、はんだごてというか電子工作的なものに触れられていたんですか?

ヨーキースさん はい。学校を卒業して電機メーカーに入社したあと電気設計をずっとやっており、はんだ付けをずっとしてました。なのでもともとハンダごても持ってましたし「よし、じゃあやってみるかと」すっかりハマってしまいました。

── 肩こりという問題があり、自分のこれまでのスキルとか必要なものはすでにあったからスッと沼に入った感じですね。

ヨーキースさん そこで一つ左右分離型の自作キーボードを組んでみて、満足していたんですが。ふとトラックボールやマウスを置く位置や右手の移動が気になってしまい、キーボード上で親指のところにトラックボールがほしいと思い立ちました。それからは自分で3Dプリンタなどを使って作り始めてしまったのがきっかけで、「ここまで来たらとことん作るか」と思って販売できるようなものを設計し始めました。

── 1台組んでから次のステップで設計し始めるところまで行くのは、やはり過去の経験が生きていそうですね。

ヨーキースさん 直に回路設計する仕事は最近はほとんどなくなっており、自分も最近はプログラミングがメインになってきていました。だからこそ電子工作という側面で回路設計するのが懐かしいというか、回路もちょっとやってみたい、いじりたい欲もありました。

── 回路規模的にもキーボードはそこまで複雑でも無いですし、個人で取り組むものとしてはちょうど良い題材なのかもしれないですね。

ヨーキースさん スイッチが並んでいるだけなので、細かい部分を除けば単純な構造ですね。

自作キーボードを1000台売る覚悟があればいける

トラックボール付き自作キーボード「Keyball61」

── トラックボールに注目され、実際にKeyballシリーズではオリジナルのトラックボールを搭載していましたが、このサイズを選んだ理由は?

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