マンションに自転車店が駆けつけて、1日26万円も売れている理由週末に「へえ」な話(1/4 ページ)

» 2021年11月27日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

 都市部のオフィス街に活気が戻りつつある。道路を見ると、たくさんのクルマが走っていて、カフェでは多くの人がコーヒーを楽しんでいて、終電で帰る人の姿もよく目にするようになった。コロナ前の日常が戻りつつあるわけだが、筆者が気になっていることが1つある。キッチンカーだ。

 「あー、そーいえば、オフィス街にも増えてきたなあ。ランチの時間帯になると、行列ができているところもあるし」と思われたかもしれない。ハンバーガー、カレー、ピザなどを販売しているクルマがたくさん並んでいるわけだが、そんな中で「自転車の修理・点検」を掲げるところが目についたのだ。運営しているのは、中古の電動自転車をECサイトで販売している「e-charity(イーチャリティ)」だ。

 大変失礼ながら「クルマでわざわざ来ているけれど、自転車の修理を頼む人っているの? 困ったら近所の自転車店に行くでしょ」と思ったわけだが、キッチンカーのマッチングシステムを提供しているMellow(メロウ)の仕組みを使って、今年の5月に始めたところ、想定以上のお客がやって来た。「ウチの自転車を修理して」「油をさしてもらえませんか?」といった声が多く、1日の売り上げが26万円を超えた日も。「損益分岐点は3万5000円」(担当者)ということなので、大幅に上回っているのだ。

移動営業をしたところ、想定以上に好評で

 それにしても、なぜ自転車の修理・点検に人が集まっているのだろうか。その謎を解く前に、イーチャリティ社がなぜクルマを使って、営業をすることになったのかも気になっている。先ほど紹介したように、同社の本業はECサイトでの中古電動自転車の販売である。

 移動営業を手掛けるようになったきっかけを、同社の今西一樹さんに聞いたところ「自転車を購入しても、その後、メンテナンスが必要になりますよね。パンクをすれば修復しなければいけませんし、不具合が生じればそこを修理しなければいけません。以前、お客さんから電話がかかってきたら、クルマでかけつけて修理をしていたんですよね。しかし、連絡がくるまで待機しなければいけませんし、移動の交通費もかかってしまいますし、ビジネス的には厳しいものがありました」と振り返る。

クルマで駆けつけて、自転車を修理するビジネスは……

 しかし、多くの人と接していく中で、「自転車を修理してほしい」といったニーズがあることは分かってきた。そこで神戸のとある商業施設にクルマで駆けつけて、修理・点検を行ってみることに。同社にとって初めての試みなので、お客がどのくらいやって来るのかよく分からないし、どのような依頼があるのかもよく分からない。分からないことだらけの中でスタートしたところ、予想以上に依頼があったのだ。

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