クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

日産、全固体電池EVを28年販売 充電時間3分の1に

» 2021年11月29日 11時43分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 日産自動車は11月29日、長期ビジョン「アンビション2030」を発表し、次世代バッテリーである全固体電池を使った電気自動車(EVを投入)を2028年に市販する計画を明らかにした。

全固体電池について話す日産の内田誠社長

 次世代バッテリーとして知られる全固体電池の自社開発を進めており、24年にパイロット工場を立ち上げ試作を開始。26年までに1400億円を投じ、28年に搭載したEVを市販する。日産の内田誠社長は「リチウムイオン電池と性能が同じなら開発の意味はない。航続距離や充電時間など、EVの使い勝手を大幅に向上させる」とした。

 具体的には、エネルギー密度はリチウムイオン電池の2倍、充電時間は3分の1に短縮することを目標とする。これによって、大型車両のEV化が可能になる。さらにkWhあたりのコストを65ドルまで引き下げ、「EVの車両コストをガソリン車同等まで引き下げる」(内田氏)とした。

全固体電池は安全性が向上するだけでなく、性能の大幅向上と価格の低下を見込む

5年間で電動化に2兆円を投資

 日産の長期ビジョンの要は、電動化と自動運転などの知能化だ。これまで電動化技術には1兆円を投資してきたが、今後5年間でさらに2兆円を投資。30年までに電動車比率を50%以上に引き上げる。

 5年後の26年には、EV軽自動車を含め電動化車両を23車種投入。比率を40%以上に引き上げる。

 自動運転関連技術については、自動運転の“目”にあたる、次世代LiDAR技術を20年代半ばまでに開発を完了し、30年までにほぼすべての新型車に搭載する計画だ。日産の自動運転技術「プロパイロット」を搭載した車両は現在100万台規模だが、5年後には250万台へと引き上げる。

全固体電池を床面に敷いたプラットフォームを構想。EVパワートレインの主要部品統合も進め、26年までに30%のコスト削減を行うという

 6000億円を超える赤字に転落するなど、苦境にあった日産だが、「黒字化の見通しが立つまで来た」と内田氏は話し、「営業利益率5%以上はしっかり確保」した上で、大きな投資を進める。

EVのコンセプトモデル3車種も披露した。オープンカーの「MAXOUT」、マルチSUVの「HANGOUT」、ピックアップトラックの「SURFOUT」

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