クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

スバルは、どこで儲けている? 国内もASEANも中国も欧州でも売れてない鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(1/3 ページ)

» 2021年11月25日 08時00分 公開
[鈴木ケンイチITmedia]

 SUBARU(スバル)は、非常にユニークな自動車メーカーです。前身が中島飛行機であったこともあってか、とても技術を大切にしており、そうした特徴が製品にも色濃く出ています。

 具体的にいえば、少数派の水平対向エンジンという形式のエンジンしか生産していないこと、また、「ぶつからないクルマ」として知られる先進運転支援システム「アイサイト」を独自技術として持っていること、そしてほとんどのモデルが得意とする4WD技術を採用していることなど。どれも他の自動車メーカーにないものばかり。小さなメーカーですが、他にないキラリと光る優れた技術を持っているというのがSUBARUだといえます。

SUBARUが10月に発表したレガシィ アウトバック

 ただし、独自技術を優先することは、すべてが良いことばかりではありません。例えば、4WDにこだわるため、正直、燃費性能面は苦手とします。また、水平対向エンジンを使っているため、エンジンを横置きする小さなモデルがありません。トヨタでいえば、ヤリスやアクアといったクラスのコンパクトカーを持っていないのです。さらに、軽自動車の生産からも2008年に撤退しています。つまり、数多く売れる軽自動車やコンパクトカーがありません。ですから、数多くクルマを売ることが難しいというのがSUBARUの最大の弱点となります。

 実際に、どれだけSUBARU車が売れているかといえば、20年度(20年4月〜21年3月)の日本での販売は約10万6000台。コロナ禍の前となる19年度(19年4月〜20年3月)は約13万台です。国内トップのトヨタが年間約150万台ですから、ざっくりと、その10分の1以下という規模。トヨタとSUBARUの間には、それほど大きな差が存在しているのです。

 また、SUBARUは、燃費が良くて、価格の手ごろな小さなクルマもありません。そのため、ASEAN地域での販売もさっぱり。さらに世界最大となった中国にも進出していないため、かの地の販売は、日本からの輸出のみ。近年は、年間2万台ほどしか売れていません。

 また、燃費規制の厳しい欧州も、実のところSUBARUの苦手な地域です。かつては欧州で人気のWRC(世界ラリー選手権)で活躍していたSUBARUですが、最近では、年間数万台規模しか売れていません。昨年(20年4月〜21年3月)は、なんと年間の販売台数が約1.4万台まで落ち込んでしまいました。つまり、ASEANも中国も欧州でも、ぜんぜん売れていないのです。

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