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米国で仕事に戻りたくない人が続出。日本にも波及か?“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)

» 2021年10月27日 07時30分 公開
[加谷珪一ITmedia]

 米国ではコロナ危機からの景気回復が進んでいるが、一方で多くの人が仕事に戻りたがらないという現象が発生している。コロナをきっかけに仕事のリスクや自身の生き方について考え直す人が増えており、この動きは日本にも波及する可能性がある。

求人に応募する人が少ないという異常事態

 日本より先行してワクチン接種が進んだ米国では、すでに経済がコロナ前の水準を超えるなど順調な回復ぶりを見せている。景気拡大に伴って求人も増加しており、本来であれば、就業者数が大きく増えるはずだった。ところが9月の雇用統計では、雇用者数の増加が前月比でわずか19万4000人にとどまるなど、雇用の伸び悩みに直面している(事前の予想は50万人増だった)。

 米国は日本と異なり、雇用の流動性が高いので、コロナ危機のような事態が発生すると多くの従業員が解雇される。だが、再雇用も急ピッチであり、景気が良くなればあっという間に就業者数が増加するというのがこれまでのパターンだった。

 だが、今回はいつもと様子が違っている。米国は国民に対して手厚い給付金を配布したので、感染状況が悪化していても、多くの労働者が働かずに生活を維持できた。しかし、各種給付金はほとんど終了しており、そろそろ仕事に戻らないと生活が成り立たないはずである。

米国で雇用が伸び悩んでいる(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 景気の拡大に伴って求人が増え、給付金も打ち切られているのに雇用が増えないのは、積極的に求人に応じない人や仕事を辞める人が増えていることが原因である。米国の8月における退職者は427万人と大幅に増えた。多くの企業が、雇用をつなぎ止めようと待遇の引き上げを行っている。

 景気が良くなっているにもかかわらず、多くのビジネスパーソンが仕事に戻らない、あるいは退職するというのは、何が原因だろうか。米国人は基本的に仕事が大好きであり、「今の仕事はどうだい?」というのがあいさつの決まり文句にもなっている。そうしたカルチャーの国において、多くのビジネスパーソンが仕事に消極的というのは尋常ではない。

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