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ドコモの通信障害から考える「サブ回線」を持つ意味とは(1/2 ページ)

» 2021年10月22日 11時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 10月14日夕方に発生したNTTドコモの通信障害は、復旧までに長い時間がかかったこともあり、多くの人に影響を与えた。

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 その過程で話題になったのは、「回線トラブルに備えて予備回線を持つのは現実的なことなのか」ということだ。

 個人でメイン回線以外にサブ回線を契約し、常時使える状態にしている人は決して多くない。ハードルが高いのは事実だろう。

 だが、そのハードルは下がっているのも事実だし、見方を変えれば「別の方法」があるのも事実だ。

 回線トラブルへの対応手段について、改めて考えてみたい。

ドコモのトラブルは「状況の複雑さ」が混乱を拡大した

 10月14日に起きたNTTドコモの障害で、最後まで残った3G回線での不具合が解消されたのは、翌15日午後10時のことだった。30時間近くトラブルが続いたこともあり、影響を受けた人も多いだろう。

 筆者もNTTドコモ回線を使っている。だが一時的に通話に支障が出た程度で、そこまで深刻ではなかった。より深刻なトラブルに見舞われた人にとっては災難でしかなかっただろう。

 今回の件については、トラブルの状況にばらつきがあり、状況が分かりにくかった。理由の詳細は省くが、アンテナピクトまで消えて完全にダメだった人もいれば、通話だけできずに通信はできた人もいる。

 さらに「トラブルから回復した」と思われる時間も明確でなかったことから、問題がさらに複雑化した部分もある。

 14日午後7時57分、NTTドコモから「ネットワーク規制が完全に緩和された」と案内が出る。これはトラブルから完全に復旧したことを意味していない。トラブルが原因となって携帯電話ネットワーク全体にさらなる悪影響が出ることを防ぐためにかけていた制限を緩和した、というものだ。

 だが、10月14日午後7時台後半から、一部メディアから「NTTドコモのトラブルは復旧の見通し」という報道が始まった。中には「完全復旧」という見出しのものもあった。

 結果として、そうした報道を見た人や、ネットワーク制限緩和によってアンテナピクトが復活したことによって「電話がつながる」と思った人が一斉に使い始め、ネットワークのトラブルを生んだ。

 実際に、4Gや5Gのトラブルが解消されたのは15日午前5時のことであり、トラブル部分の切り分けがより難しかった3Gについては「影響範囲は4G・5Gほどではない」(NTTドコモ)ものの、完全復旧が15日午後10時とかなり遅くなっている。

 面倒なのは、通信障害の影響を受けた「利用者の数」を算出するのが難しい、という点だ。

 NTTドコモは、通話や通信の量が通常に比べ何%少ないかや、どのくらいの回数通信が試みられたのかはすぐに算出できる。だが、つながらないために一人が何度も通信・通話を試みた可能性が高く、結果として何人に、どのように影響を与えていたのか、というデータを算出するのが難しい。

 そうしたことも、今の「携帯電話ネットワークのトラブル」を語る上では理解しておきたいポイントである。

必要ならば「サブ回線」を、楽天とpovo2.0が追い風に

 どちらにしろ、携帯電話ネットワークがトラブルによって不通になることは「十分にあり得る」ことだ。どの事業者でもその可能性はあるし、利用者の側から何かすることで避けるのも難しい。

 この辺は、日常的な回線の快適さや「通話可能エリア」の話とはまた違うものだ。

 MVNOであっても、今回のように大規模な通信障害が回線を提供するMNO側で起きると、結局「借りている立場」なのでトラブルの影響を受けることもある。

 仕事などの関係で携帯電話ネットワークに強く依存している場合、万一のために「トラブルが起きた回線以外を用意する」ことを考えるべきかもしれない。

 筆者は複数回線を持っているが、これは各社サービスのテストや理解のためと、トラブル時のリスク回避の両方の意味がある。大手MNO4社とは全て契約している。

 これは非常に特殊な例だ。データ使い放題の契約を複数社と交わす人はごく少数であり、普通はやはり「1社としか契約しない」ものだ。コストの面を考えれば当然といえる。

 ただ、ハードルが本当にコストであるなら、現在はずいぶん状況が変わってきたといえる。「povo2.0」や「楽天モバイル」のように、あまり使わないのであれば毎月の支払いをごく少額に抑えられるサービスが出てきているからだ。

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 以前、こうした複数回線の契約はMVNO回線が使われてきた。低価格なプランであえて「サブ回線」を持っておくわけだ。今もそれは有効なのだが、前述の2サービスが「使わない場合には利用料はほぼゼロ」という形を示してしまったので、魅力は薄れている。

 本当に「仕事上、回線が落ちては困る」のであれば、これらの回線を利用し「複線化」できるよう考えておくべきだろう。

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