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ATMの不正出金をAIで検知、精度は94% 三菱UFJとラックが実証実験 特殊詐欺対策に

» 2021年10月25日 12時22分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 情報セキュリティ企業のラック(東京都千代田区)と三菱UFJ銀行は10月22日、AIを活用して、高齢者から盗んだキャッシュカードでATMから出金するなどの不正取引を検知する実証実験を行ったと発表した。ラックの金融犯罪対策部門が蓄積したデータを活用し、不正出金を約94%の精度で検知することに成功したという。

 今回の検証には、三菱UFJ銀行が提供した半年分の取引データ(正常なデータ約数万件、不正なデータ数件)を活用。ATMを使った取引のデータ数千万件を学習させたAIで、不正な取引を検出できるか試した。

 今回のようなAIの開発では、正常な取引の学習用データに対し、不正な取引の学習用データが少ないことが課題となる。データの比率に偏りがある場合、検出率が下がったり、誤検知の可能性が上がったりするという。

 そこで今回の実験では、ラックの金融犯罪対策部門が蓄積した知見を基に特徴量エンジニアリング(データセットに新しい特徴量を設け、機械学習モデルの精度を上げること)を実施。さらに、正常な取引の学習用データを間引いたり、不正な取引の学習用データを複製してかさ増ししたりすることでバランスを取り、精度向上につなげたという。

 ラックは実験結果について「金融機関の実用に耐える基準を満たすことができた」とコメント。今後は今回のデータを基に、インターネットバンキングでの不正取引を検出できる技術の開発も進める方針。外部への提供も検討するという。

【編集履歴:2021年10月26日午後4時40分 追加の取材に基づき、検証に利用したデータの件数を変更しました】

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