「グランピング市場に価格競争が起こる」 ブームの火付け役、星野リゾートが仕掛ける"生き残り戦略"成長期から成熟期へ(1/3 ページ)

» 2021年10月19日 08時30分 公開
[熊谷紗希ITmedia]

 「毎週、日本のどこかでグランピング施設がオープンしているのではないか」と思うほどに、開業のお知らせを目にするようになった。グランピングは、コロナ禍での三密回避レジャーとして高い人気を誇っている。一方、「数が増えすぎて飽和市場になっているのではないか」「アフターコロナでは需要が落ち込むのではないか」という懸念もある。

「星のや富士」の松野将至総支配人

 日本でのグランピングブームの火付け役は、星野リゾートだといわれている。同社は、2015年10月に富士山のふもとに「星のや富士」を開業した。

 同施設の総支配人、松野将至氏は、今後のグランピング市場について「現在は成長期から成熟期に向かっている段階。今後、飽和状態になり、価格競争が起こるかもしれない」と話す。

 グランピングという言葉が流行(はや)りだしてから、体感としてはそんなに年月が流れていないような気もするが、なぜここまで早いスピードで成長したのだろうか。また、価格競争で淘汰されないために、グランピング事業者はどのような対策を取っていくべきなのか、話を聞いた。

グランピングは、いつ日本に持ち込まれたのか?

 グラマラス×キャンピングの造語である「グランピング」。誕生の歴史は1980年代の米国にさかのぼる。米国の山岳地方では大自然に囲まれたラグジュアリーなリゾート体験としてグランピングが流行していた。星野リゾートの星野佳路代表も実際に現地で体験したという。米国に限らず、さまざまな自然豊かな国でグランピングが定着していた。

 グランピングは「大自然を通して圧倒的な非日常体験」を実現すること。星野代表は、自然豊かな日本とグランピングの相性の良さを確信。「観光事業を盛り上げる起爆剤になるのでは?」と考え、15年に「星のや富士」を開業。グランピングという言葉の認知拡大に努めた。

2015年の開業した「星のや富士」(画像:星のや富士提供)

 「星のや富士が開業する前にグランピングとうたっていた施設は3つほどだったと記憶しています。三重県の『伊勢志摩エバーグレイズ』、東京都・豊洲の『WILD MAGIC』、静岡県・熱海の『初島アイランドリゾート』です」(松野氏)

 当時は星のや富士を入れて、4つほどしかなかったグランピング施設も、20年12月の時点で354施設に上っている(出所:全国グランピング協会)。いくらグランピングが、星野リゾートの肝入りプロジェクトだったとしても、市場の成長スピードが早すぎる気もする。松野氏は、その理由として「参入障壁の低さ」を挙げる。

「伊勢志摩エバーグレイズ」(左)、「WILD MAGIC」(中央)、「初島アイランドリゾート」(画像:公式Webサイトより)
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.