“普通のHDD”でも“ハイブリッドHDD”でもない「OptiNAND」の謎 50TBも視野?HDDの進化に挑むWestern Digitalの一手【前編】

Western DigitalがHDDにフラッシュメモリを搭載する新しいストレージアーキテクチャを明らかにした。これは単なるハイブリッドHDDではないという。何が決定的に違うのか。

2021年10月15日 05時00分 公開
[Johnny YuTechTarget]

 Western DigitalはHDDとフラッシュメモリを組み合わせる新しい技術「OptiNAND」を発表した。HDDにフラッシュメモリを搭載する「ハイブリッドHDD」はこれまでにも登場している。OptiNANDはそうした既存のハイブリッドHDDとは異なるという。

普通のHDDとは違う「OptiNAND」の利点 “50TB”も視野に

 まずOptiNANDのHDDは、フラッシュメモリにメタデータ(データそのものの付帯情報)を格納することで従来のHDDにはないメリットをもたらす。

 OptiNANDはHDD組み込みのフラッシュメモリを使用することでプラッタ(磁気ディスク)の記録密度を高め、容量が増加する。ストレージへの記録前に揮発性メモリに一時的にデータを保管する「書き込みキャッシュ」を無効にした場合の、書き込み速度も向上する。通常、書き込みキャッシュを有効にすると電源を失うことでデータ損失が起きる可能性があるが、OptiNANDはそのリスクを軽減する。

 Western Digitalは、OptiNANDを使用する同社初の製品として9枚の磁気ディスクを備える容量20TBのHDD製品を開発した。同社は、2030年までに50TBの容量を備えるHDDを製造できると見込んでいる。

 「至る所でデータが増加している。そのデータはどこかの物理的なストレージに格納される必要がある」。Western Digitalでグローバルテクノロジーおよび戦略部門のプレジデントを務めるシバ・シバラム氏はそう言う。データをクラウドサービスに預ける場合でも、データはやはり物理的なストレージに格納される。「ストレージの記録密度が向上すれば、クラウドベンダーはデータセンターの床面積をより効率的に使える」とシバラム氏は話す。

 OptiNANDは、HDDに組み込みフラッシュメモリ「iNAND」を搭載する。だがこれは単なるハイブリッドHDDではない。OptiNANDのフラッシュメモリはデータそのものを格納しないからだ。アクチュエータ(データを読み書きする磁気ヘッドを動かす部品)への命令など、HDD操作に関するメタデータだけを格納する。

 メタデータをフラッシュメモリにオフロードすることによるメリットをまとめよう。

  • プラッタの記憶領域が増える
  • メタデータはプラッタから取り出すよりもフラッシュメモリから取り出す方が高速になる
  • 突然の電源断によるデータ損失が最小限に抑えられる

 Western Digitalは、ストレージベンダーのSeagate Technologyや東芝デバイス&ストレージと競争している。OptiNANDはその競争に勝ち抜くための新しい技術だ。Western Digitalは今後、OptiNANDを全てのHDD新製品に使用する可能性がある。

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