手続きや各種取引で商習慣や経験に頼ってきた不動産業界を、AIやIT技術を活用したデジタル化により変革しようとしているSREホールディングス。
2014年設立の新興企業にもかかわらず、経済産業省と東京証券取引所が選んだデジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄2021)の中で、6月に「デジタル時代を先導する企業」としてグランプリを受賞した。
同社の西山和良社長に古い体質が残る同業界を、どのようなデジタル手法を駆使して変えようとしているのか、インタビューした。
――ソニー(現ソニーグループ)を飛び出して、自分で会社を設立したきっかけは?
ソニーでは最初、事業部に所属してさまざまな改革や改善を担当していました。平井一夫前社長がちょうどソニーの社長に就任し、「ソニーをターンアラウンド(再生)させるぞ」と号令をかけ始めた時です。それぞれに事業を担当するカンパニーの中で、意見を積極的に発信する社員が集められ、12年に私もそのメンバーに選ばれました。
そこで会社全体の戦略を考えるコーポレート企画を担当し、平井前社長をサポートする仕事をします。平井前社長からは「ソニーの大きなアセット(資産)で儲(もう)けるのではなく、自分の力を試してみなさい」とアドバイスをもらいました。
ソニーという会社は社内からベンチャーをいくつか輩出していて、もともとチャレンジ精神が旺盛でした。インターネットプロバイダーのソネットを上場に導いた吉田憲一郎ソニーグループ社長、家庭用ゲーム機「プレイステーション」の生みの親である久夛良木健氏ら社内外で新しい事業を生み出すDNAがあり、挑戦する人はカッコいいというカルチャーがありました。
最初は自分にはとてもできないと思っていましたが、創業した先輩の助言もあって起業したのが14年の4月でした。
――どうしてソニーと畑違いの不動産分野で起業したのですか。
新規事業を始めるにはコツのようなものがあって、3つ条件があると考えていました。1つはある程度の市場規模が既に日本にあること。例えば個人的な宇宙衛星などを始めるといっても市場が存在しなければ厳しいのです。その点で不動産はすでに大きな市場がありました。
2つ目は、その市場は大きいけれども、改善の余地があり、利用者や消費者が「こう改善してほしい」という必要性を感じていること。
3つ目は、その改善を、デジタルなどを使って解決できる可能性が高いこと。この3つの条件を満たし、ソニーが進出していない分野を探してソニー不動産を設立しました。
13年の12月ごろから起業のアイデアを考えていたのですが、早く作った方が良いという指摘もあり、翌年4月に会社を創設しました。このニュースが日本経済新聞の1面に大きく報じられ、大騒ぎになりました。創業当時、社員は私一人でしたが、その後、リクナビなどを使って不動産に詳しい社員を募集したら応募者が殺到しました。
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