やはり、人生は“親ガチャ”で決まってしまうのか 「遺伝」と「社畜」の密接な関係“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)

» 2021年09月28日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

 「親ガチャ」というキーワードが論争の的となっている。この言葉に多くの人が反応するのは、社会に対するある種の「諦め」が台頭しているからだろう。だが努力しても意味がないのかは、どのような働き方をするのかによって変わってくる。知名度の高い会社に入り、年功序列で昇進することを人生の目標とするならば、親ガチャの影響が大きいことは否定できない。だが、そうでない場合、遺伝はキャリアに大きな影響は及ぼさない。

スポーツや単純な知能テストは親の影響が大きい

 このキーワードは、「子どもは自分で親を選ぶことができず、育つ環境も選択できない」という現実について、カプセルトイの購入で偶然性を楽しむ「ガチャ」に例えたものである。では親によって自身の能力がほとんど決まってしまうというのは、科学的に見て事実なのだろうか。

 子どもの学習能力や身体能力が親から大きな影響を受けるのは紛れもない事実である。学術やスポーツは基本的に実力勝負の世界であるにもかかわらず、親子3代にわたって学者を続けている、あるいはスポーツ選手になっているケースは枚挙にいとまがない。

親からの遺伝で人生は決まってしまうのか(出所:ゲッティイメージズ)

 特にスポーツはその傾向が強く、残念だが親ガチャはその通りなので、親が運動音痴だった人は運動が不得意な可能性が高い。学業も同じで、知能テストや受験勉強など、単純な知能を競うゲームにおいては遺伝の影響が大きい。大雑把に言ってしまうと、半分は親の遺伝で子どもの能力が決まると言われる。

 日本の場合、会社員の選抜はほとんどが単純な学力テストに依存している。近年は学歴不問や総合力を打ち出す企業が増えているが、現実には大学名(つまり偏差値)による足切りが行われており、学校のテストで高い点数を取り、偏差値の高い大学に入ったほうが有利なのは間違いない。

 学校のテストや受験は総合力で勝負するのではなく、単純なテストに過ぎないため、経験値も大きく作用する。親の経済力が高く塾などに行けた人は、そのぶんだけ経験値が増えるので、やはりテストにおいて有利になる。

 いわゆる偏差値が高い学校に入った人は大抵、類似問題をいくつもこなして共通パターンを見つけ出し、頭に叩き込むというやり方でテストの点数を上げていたはずだ(実際、それをやれば確実に点数は上がる)。こうした(あまり意味があるとは思えない)行為に集中できるのかどうかも、もともとの能力や環境に依存している可能性がある。

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