攻める総務

「何でも屋」総務の業務を見える化、勝手に「ジョブ型化」する方法総務のための「オフィス」再考

» 2021年09月15日 10時20分 公開
[金英範ITmedia]

連載:総務のための「オフィス」再考

 社内で“何でも屋”といわれる総務。「どの部門にも当てはまらない業務が回ってくる」上に、業務内容もさまざま。結果的に「コロナ禍であっても出社してしまったほうがいい。頑張っていることも伝わるし、成果も見えやすい」となりがちです。

 そこで、25年以上、7社で総務の実務経験がある筆者は「勝手にジョブ型化」を提唱しました。業務のミッション(目的)と成果レベル(目標)を自分で定義し、成果を測る方法を決め、ジョブディスクリプションを作成してしまうのです(詳細は過去記事「総務も“勝手にジョブ型”を実践する 『リモートワークに向いていない』からの卒業」を参照)。

 今回も続編として、勝手にジョブ型化を実践している総務の経験談をベースに、ノウハウを解説する記事をお届けします。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 まず、製造メーカーA社に勤務する総務の方の例をご覧ください。

A社総務の実践例

総務の社内サービスにおいては、お客さまは社員であり、社員の困りごとを解決してこそ、会社からお給料がいただけるはずです。私たち総務部員は、社員のフロントラインに立ち、困りごとに耳を傾け、社員が本業に集中できるサービスを提供し、会社を強くすることが役割だと考えています。

在宅勤務が進む中、「あれ? ちょっと聞きたい」「あの制度ってどうなっていたっけ?」という困りごとに寄り添うために、社内チャットボットの導入を1年前から検討しています。現在は準備中で、いわゆる機能部(数十カ所の部門)で理解者を増やし、Q&Aを整備し……といった、社員への公開前の段階です。今後、いかにこのチャットボットを関係者と社員で育てていくかが重要だと思いますので、愛着がわくように、チャットボットのキャラクターをデザインすることも検討しています。せっかくやるなら「勝手に」楽しみながら、社員のお助けマンにチャットボットが育っていってくれることを狙っています。

総務のジョブ型化はまだまだ道半ばですが、「現在、総務の専門性とは何か」「その中でどのように人材育成をしていくか」を検討しています。プロフェッショナルになるという自覚と、それに対して磨きをかけるという一人一人の意識も大変重要です。業務の見える化と、どのようになればプロフェッショナルといえるのかの認識合わせをすることで、総務で働く人のやりがいを高めながら、総務のプロ化を目指していきたいと思います。


 今回のケースは、そもそも「自分が把握できていないものはマネージできない」という一言に尽きる事例ではないでしょうか。

 日常生活でもよくある話です。例えば「なぜ、携帯電話の料金がこんなに高いのか」と、まずは「気付き」、そして詳細を「見える化」し、問題に「対処」する。データ通信量が月10GBまで使えるプランなのに、実際は2GBしか使っていなかったとか、電話をほとんど使わないのに「かけ放題プラン」に加入したままだった、というような例を挙げると分かりやすいでしょうか。

 問題を見える化したら、実情に合わせて問題に対処します。携帯電話の例だと、契約内容を変更します。そして利用状況を確認しながら、通信量を多少コントロールする習慣や、自宅に着いたら必ずWi-Fiに切り替えて節約する習慣を身につけるのが自然でしょう。

 総務の業務も同様に見える化、習慣化したら、そのあとは習慣をデジタル化、自動化できるようになります。最近、流行りのサブスクで使えるツールやアプリは、あくまで見える化した問題の解決、プロセス化のためのソリューションに過ぎません。上記の例でも明らかなように、とにもかくにも総務のDXのスタート地点は、今行っている業務の見える化なのです。

 「リモート環境で分からなくなったこと」などの問題を見える化して迅速に対応し、社員が仕事をより円滑に進められるように、ストレスを低減、生産性向上を促すのが目的です。チャットボットを利用するのは、あくまでそのための手段です。

 そうは言っても、どのように整理すれば、総務の業務を「見える化」できるのか。どこからスタートしていいのかすら分からないのが総務の仕事です。請求書処理の仕方、メールサービスの業務のフローから見ればいいのか、財務の数字なのか、はたまたオフィスのレイアウト変更のプロセスを見える化すればいいのか……キリがないくらい総務の仕事は範囲が広いのです。どうすればいいのでしょうか。

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