「コロナが落ち着いた時、一番“会いに行きたい”スタッフになりたい」──そう話して、大粒の涙を流したのはMOUSSY ルミネ立川店の店員、なとりかさん。8月に実施した令和のカリスマ店員を決めるコンテスト「STAFF OF THE YEAR」で、7万人の店舗スタッフの中から2位に選ばれた。
アパレル業界は、今が正念場。外出自粛のあおりで希望退職者を募る企業も増えている。もしかしたら本社から閉店を言い渡されるかもしれないと、不安を抱える店舗スタッフも少なくないという。
そんな中、オンライン接客が一つの希望となっている。コンテストを主催したバニッシュ・スタンダードが提供する「STAFF START」は、スタッフのECやSNSなどへの投稿をきっかけに、どれだけ商品が購入されたかを可視化するサービスだ。
STAFF STARTは、2016年にサービスを開始して以来、毎年右肩上がりで成長。約1600のブランドに利用(21年7月時点)され、年間流通額は1200億円を超える(20年7月〜21年6月の実績)。「オンライン接客でも本気で人に向き合えば思いは伝わる」(なとりかさん)と、コロナ禍でもお客さまとスタッフのきずなを作り、店舗スタッフの意欲を引き出している。
オンライン接客は、勤務場所や雇用形態の壁も取り払う。30代後半のアルバイトスタッフであるGLOBAL WORK イオンモール新潟南店のバヤコさんは、「地方にいても、アルバイトでも、アラフォーでも活躍できるんだって、同じような環境で働く人の希望になりたい」とはにかんだ。
バニッシュ・スタンダードの小野里寧晃さん(代表取締役社長)は、STAFF STARTによって店舗スタッフによる売り上げの影響力が可視化され「すごい、やっぱり店舗スタッフがいないと」と評価されるようになったと話す。導入企業の中には、店舗スタッフたちの活躍でEC売り上げが700%アップした例や、一人で月間9000万円以上を売り上げたスタッフもいる。
評価されるようになったのは店舗スタッフだけではない。導入企業のEC担当者も「店の人たちがようやく握手してくれるようになった」と話しているという。
小野里さんは「アパレルのオムニチャネルやOMOが進まなかった理由は、EC担当者が店舗にとって好ましい存在ではなかったからです。例えば接客中、お客さまが希望する商品が店舗になければ、自社のECを案内すればいいはずです。しかし、実際多くの店では、店舗の責任者が『ECには誘導するな。自分たちには何の得もない。ECで売れるようになったら店は人員削減に追い込まれるだけだ』と止めていたんです」と説明する。
STAFF STARTは、その構造にメスを入れた。
「店舗スタッフ個人の功績が可視化されるということは、各店舗の功績も明らかになるということ。『新宿店の小野里が、ECを案内し商品が売れたら新宿店のポイント』という評価が可能になりました。今なら店側も全力でECを案内できるんです」
今でこそ、アパレル業界の期待を一身に受けているSTAFF STARTだが、誕生までには壮絶な道のりがあったという。
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