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水滴をロボット化し、磁石で操作 毎秒2mで移動しホコリを掃除Innovative Tech

» 2021年09月06日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 香港城市大学と中国科学院の研究チームが開発した「Bioinspired magnetically driven liquid manipulation as microrobot」は、磁石を使って水滴を移動させるシステムだ。水滴の中に置いた小さな鉄のビーズを水滴ごと磁石であらゆる方向に動かせる。

photo 左上から鉄のビーズが転がり、途中の水滴(青、黄色、ピンク)を吸収し転がり続ける様子。レゴの間を抜けて、徐々に水滴が大きくなっていく様子が確認できる

 液体の動きを制御する従来の方法としては、疎水性(水と混ざりにくい)の高い表面から、親水性(水に混ざりやすい)の高い表面に流す手法や、熱や光などの外部刺激を利用して液体の動きを誘導する手法などがあるが、移動速度が遅くなりがちで、途中で止めることもできない。

 このシステムでは、親水性コーティングした小さな鉄のビーズを水滴に埋め込む。直径約1mmの鉄のビーズを水滴の中に入れると、水を引き寄せてビーズを包み込み、水滴ロボット「Hydrobot」に変身する。

photo システムの構造図。鉄のビーズが入った水滴を疎水性の高い表面に置いて、下から磁石で制御する

 水滴ロボットを疎水性の高い表面に置き、その裏から磁石で操作すると、鉄のビーズに付着した水滴を失わず、あらゆる方向に毎秒2mの速さで移動。いつでも停止できる。

photo 磁気によって動く一連の様子

 水滴ロボットはそのまま転がり続け、途中の水滴を吸収することで巨大化する。これには上限があり、1mmの鉄のビーズでは水滴程度の大きさしか運べない。そこで、鉄のビーズを増やしてどれだけの水が運べるかを実験した。2mmのビーズにしたところ、1ミリリットルの水を操作できることが分かった。

 水滴ロボットを下に、磁石を上にした実験でも、磁石が水滴ロボットを引き寄せた。ビーズと水の間の表面付着力が重力に逆らい、水滴ロボットの落下を阻止できたという。

photo 上から磁石を当てて落とさないことも可能

 水滴ロボットは、磁石によって精密な制御ができるため、表面を転がしほこりを集めて掃除するなど、さまざまな活用法が考えられる。実験でも転がりながらほこりを回収し、表面を傷つけることなく掃除した。

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