EV(電気自動車)の急速な普及が視野に入ってきた。EU(欧州連合)がハイブリッド(HV)を含むガソリン車の新車販売を2035年までに禁止する方針を打ち出したことで、各社は一気にEVシフトの前倒しを進めている。
日本では充電設備の不足が懸念されており、早急な対策が必要なのは間違いないが、現時点における充電設備不足は日本にとって致命傷とはならない可能性が高い。その理由は、自動車を保有する世帯の多くは戸建て住宅であり、自宅で充電が可能だからである。
EUの欧州委員会は21年7月14日、HVを含むガソリン車の新車販売について35年に事実上、禁止する方針を打ち出した。これまでHVは電動車両と見なされており、一部の日本メーカーはHVを今後の主力製品と位置付けていた。だが今回の決定によってHVも禁止の対象となったことから、HVに注力していたメーカーは抜本的な戦略転換を迫られることになる。
EUの動きに呼応するように、独メルセデス・ベンツが30年にもすべての車種をEVにするなど、業界はEVシフトをさらに加速している。日本ではホンダが40年までに世界で販売するすべての新型車を、EVか燃料電池車(FCV)に切り替えるという、踏み込んだ宣言をしていたが、今回のEUの方針転換を受けて、さらにEV化のペースを前倒しする。
自動車の開発や製造、設備の減価償却には一定の期間が必要となるため、メルセデスのように30年を基準に全車種EV化ということになると、今すぐにガソリンエンジンに関するすべての業務をやめなければ目標は達成できないくらいのスピード感である。
日本ではEVシフトは政治的な動きであり、市場と乖離(かいり)しているとの意見が根強いが、少なくとも欧米ではそうではない。EVの存在感は確実に高まっており、7月に米国で行われた消費者調査では、すでに半数の消費者が「次に購入する自動車はEVを検討する」と回答している。
筆者は長年、わざわざ5速MT(マニュアル・トランスミッション)車に乗っていたくらいなので、クルマの運転が好きであり、ガソリン車にはそれなりに思い入れがあるが、EVが持つ特徴を冷静に分析すれば、特にこだわりを持たない一般的な消費者にとってEVはかなり魅力的だ。
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