顧客担当者が異動してしまったので失注・解約に──法人向け商材を扱う企業であれば、こうした経験は避けて通れない。
特にサブスクリプション型で顧客との関係性が長期にわたる商材では、懇意にしていた顧客が異動(もしくは退職)した場合、築き上げた信頼関係がリセットされてしまい、急に解約の危機に陥ることが少なくない。
そうした顧客の喪失は、“偶然”なのだろうか? 本記事では顧客の異動に対してどのように向き合うべきかを考えていきたい。
シリアルアントレプレナーのデビッド・スコック氏は「チャーン(解約)の理由は2つある。1つはオンボーディングの失敗。そしてもう1つは購買を推進したチャンピオン顧客の喪失だ」と述べている。チャンピオン顧客とは、ツールの利用を強力に推進してくれる優良顧客、キーマンのことを指す。
チャンピオン顧客の喪失は、解約理由の2分の1。つまり、顧客の異動による解約は偶発的に起こるものではなく、当然のごとく発生するものだと捉え、備えておくべきなのだ。
特に日本企業が対象顧客である場合、ローテーション制度による人事異動はもちろん、小さい会社であっても新規事業の立ち上げなどで短期間で組織体制がガラッと変わることも珍しくない。
異動はLTV(ライフタイムバリュー、顧客生涯価値)の向上を脅かすリスクとして、組織的な対応方針を決めておく必要がある。解約の2大理由のもう1つ、成約時のオンボーディングを重んじるのと同じくらい、重要なものと考えるのが良いだろう。
そして異動への対応が重要な理由はもう1つある。
果たして異動はどの顧客にも平等に訪れうる、確率の見えないいわばルーレットのようなものなのだろうか?
答えはNOである。残念なことに、導入を積極的にプッシュしてくれたり、率先して活用推進をしてくれていた、いわゆるチャンピオン顧客ほど異動してしまう確率は高い。
それはなぜか。理由は、チャンピオン顧客の特徴を考えれば自ずと明らかになる。サービスを導入したり活用を推進したりするチャンピオン顧客は、ある程度チームでの在籍期間が長く、その上で現状を変革しようという精神を持ち、さらに社内を巻き込んで行く推進力を兼ね備えた人物であることが多い。
このような特徴は、そっくりそのまま別のチームへと異動する確率の高さを裏付けるものでもあるのだ。
チャンピオン顧客ほど異動のリスクが高いと考えると、サービスの利活用がチャンピオン顧客頼みになっているという状況は、いかに危ういかが分かるだろう。ではどのように顧客の異動と向き合うべきだろうか。
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