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ホンダ「アシモ」の開発者がハサミメーカーを支援 定年後に「新天地」で挑戦する高齢者70歳の働く場【中編】(1/3 ページ)

» 2021年07月31日 04時25分 公開
[中西享ITmedia]

 高年齢者雇用安定法が改正されて、企業は4月から70歳までの社員の就業機会を確保するよう努力しなければならなくなった。「70歳の働く場」の前編【定年後に「新天地」で挑戦する高齢者 中小企業の支援で新たな生きがい見つける】では企業の「お荷物」にならない高齢者の働き方をお届けした。

 後編では、シニア人材を信用金庫や信用組合など地域の金融機関の取引先企業に紹介してきた一般社団法人新現役交流会サポート(SKS、保田邦雄代表理事)の活動を中心にレポートする。

 SKSが創設した「新現役交流会」は、関東圏を中心に参加した中小企業が4000社を超えた。そのうち約5割超の企業が新現役とマッチングしているという。

 2003年に小泉純一郎内閣が、大企業などを退職し「(それまで培った)経験を生かしたい、働きたい」という人材を「新現役」と名付け国に登録制度を発足したものの、実際に人材を中小企業と結びつけることが難しかった。SKSはこれを地域金融機関と連携することによって、取引先の中小企業と人材を引き合わせる「新現役交流会」として仕組化。シニアのキャリアを生かせる多様な職場を仲介する枠組みをつくった。

地域金融機関が注目

 SKSが09年に東京の亀有信用金庫から始めた「交流会」を通したマッチングの活動は、12年には25の信金に拡大。その後は関東圏以外にも広がった。保田代表理事は話す。

 「『新現役交流会』は、就職や就職説明会ではありません。新現役と中小企業の双方が相手を選び、最初は国が実施している無料企業支援から入ります。その後、双方が納得すれば当事者間で『民―民契約』を結びます。それもほとんどが業務委託契約で、なかには就職に発展する新現役がいます。マッチングした企業のうち約40%が『民―民契約』をしていることは、すごいことだと思います。これが新現役と中小企業にとって、相互に都合のよいシステムになっていると考えています」

 その上で「資格や肩書ではなく、大企業を退職し経験やスキルを持った人材は、『無尽蔵の埋蔵資源』といえるのではないでしょうか。中でも得意な技術、ノウハウを持っている人が埋もれているのは、日本経済にとってもったいない。この先も全国の地域金融機関と連携を強め仕組みを発展させたい」と強調する。

東京都内の6信用組合が取引先の中小企業約60社を集めて行った「合同交流会」

 写真にあるのは17年9月に東京都内の6信用組合が取引先の中小企業約60社を集めて開催した「合同交流会」だ。大企業OBであることが多い「新現役」は、各ブースで中小企業のトップと、信用組合の支店長の前で自己PRを含めたマッチング面談をする。お互いが本音で話し合い納得して合意すれば、「新現役」に業務のサポートをしてもらうことになる。コロナ禍で面談をするのは困難なところもあるが、交流会サポートはこの面談を「成約」するための最重要イベントと位置付けている。

 最近ではこの「交流会」活動に地方銀行も着目。地銀大手の静岡銀行、北海道の北洋銀行などが交流会を通した活動に注力中だ。中小・中堅企業に融資する比率の高い金融機関にとっては、中小企業が優秀な人材を獲得して経営が上向けば新規融資の増加にもつながる。「一石二鳥」の効果が得られるというわけだ。

新現役交流会サポートの保田邦雄代表理事
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