止まらないウナギロンダリング 漁業者搾取の謎ルールに支えられる「黒いウナギ」に未来はあるか 「土用の丑の日」に憂う(1/6 ページ)

» 2021年07月28日 05時00分 公開
[真田康弘ITmedia]

 今年もウナギ業界最大のイベント「土用の丑の日」がやってきた――。新型コロナ禍の影響で専門店主体の需要は減退している一方、巣ごもり需要の拡大で、量販店でのウナギの売れ行きは好調のようだ。

 7月20日付の読売新聞によれば、流通大手イオンは定番商品の「国産うなぎ蒲焼」(約160グラム)を2020年より1割安い1880円(税別)に引き下げた。ウナギ関連商品の売り上げは前年比で2割増加とのことだ 。東京都中央卸売市場の6月の生鮮ウナギの卸売価格は前年同月の5396円と比べて2割以上安い4071円となっている(東京都中央卸売市場・市場統計)。

 消費の99%を占める養殖ウナギを育てるには、天然の稚ウナギ(ウナギの稚魚、シラスウナギ)が不可欠だ。19年にはその採捕量が史上最低の3.7トンにまで落ち込んだものの、昨年は17.1トン、今年は11.3トンと、やや持ち直していることもウナギの価格低下の一因といえるだろう。

今年もウナギ業界最大のイベント「土用の丑の日」がやってきた(写真提供:ゲッティイメージズ)

「絶滅危惧種ウナギ」の苦境

 とはいえ、ウナギの資源が極めて危うい状態にあるのには変わりがない。図1にあるように、かつて3000トン以上もあった天然ウナギの漁獲量は65トンにまで激減、13年に環境省はニホンウナギを絶滅危惧種に指定した。翌年には国際NGOのIUCN(世界自然保護連合)も絶滅危惧種に指定している。 

 一昨年に比べれば「持ち直した」11.3トンという稚ウナギの採捕量も、過去には200トン以上だったことから考えればその落ち込みぶりは明らかだ。稚ウナギ採捕量の減少は価格の高騰に直結。03年にキロ当たり16万円だったものが18年には300万円近くにまで暴騰した。現在も132万円と高止まりしている。

図1:内水面でのニホンウナギ採捕量(左目盛)、稚ウナギ国内採捕量と取引価格(右目盛)
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