爆増した3万ブース超のカプセルホテル “ブーム終焉”の理由はコロナ禍だけじゃなかった瀧澤信秋「ホテルの深層」(1/5 ページ)

» 2021年07月28日 06時00分 公開
[瀧澤信秋ITmedia]

 近年、訪日外国人旅行者の激増により宿泊施設不足が露呈、数多くのホテルなどが誕生した。ホテル“など”と記したのは理由がある。施設数で群を抜いていたカテゴリーが「簡易宿所」といわれる施設であった。簡易宿所とは法律上の区分をあらわす言葉で、ホテル・旅館と区別される。そんな簡易宿所の代表格が「カプセルホテル」や「ホステル」と呼ばれる宿泊施設だ。

 両者に共通する特色は、同一空間を不特定の人々で共有するといったイメージだろう。カプセルホテルでいえば、二段式のカプセルユニットがずらっと並ぶ光景を思い浮かべるが、あのユニットは“ベッド”であり“部屋”ではない。

 その証として消防法令などの要請によりそれぞれのスペースに扉はなく、鍵もかけられない。カプセルユニットが設置された部屋が客室であり、カプセルユニットはあくまでも家具でありベッドである。

カプセルホテル カプセルはあくまで家具(筆者撮影)

 多数の個室を設ける一般のホテルと比べて、短期間の準備で開業できる点も特色だ。イニシャルコストも低廉にして、参入・撤退のスピード感も秀でており、急激に高まった宿泊需要に対してフレキシブルに適応できた業態として注目されてきた。

 筆者は2017年の論評で「国際紛争や経済・環境問題などさまざまな要因で一気にクールダウンするリスクを内含するインバウンド需要へも柔軟に運営対応できる業態」とカプセルホテル事業を評価した。ユーザーからすると、ある程度のプライバシーが確保されるカプセルホテルは、簡易宿所の中でも利用しやすい業態といえよう。

 また、別のゲスト目線からすると、簡易宿所にも他の宿泊施設と同様に入浴(シャワーという場合もある)施設を設けることが法令で定められている。カプセルホテルでは、充実した設備を備えた大浴場を設けているのがよく見られる。露天風呂やサウナ、ジャグジーなど、宿泊利用の他に大浴場のみの利用者へサービスを提供する施設も多い。そもそも温浴施設をメインとしてカプセルホテルも営業しているといった施設もある。

カプセルホテル 充実した大浴場を設ける施設も(筆者撮影)
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