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熱海市の土石流災害から見えた、テクノロジーと災害対策 VR空間で視察して分かったこと(1/3 ページ)

» 2021年07月30日 15時01分 公開
[武者良太ITmedia]

 静岡県熱海市で起きた土石流災害は現在も検証が進められているが、3Dデータなどを使った可視化の取り組みがいち早く有志により行われていることもニュースになった。いったいどのようなことがそこから分かるのか、または分からないのか、VRコミュニケーションサービス「VRChat」内で識者に話を聞いてきた。


 近年、日本では甚大な自然災害が続いている。川の氾濫、堤防の決壊だけではない。地震や集中豪雨により地盤が緩むことで起きる地すべり、急傾斜地の崩壊、土石流も、注視しなければならない災害だ。

 2021年7月3日に起きた熱海市の土石流災害は、大雨が降り続いたことにより伊豆山の斜面が流れ落ちたと推定されていた。その後、土砂が流れ出した起点には盛り土がされていたことが判明。静岡県が専門家らによる委員会を設置して原因究明に当たるとされている。

 静岡県は災害直後にドローンで起点地域を撮影した。当時はまだ本州地域に雨が降り注いでおり、現地に足を踏み入れての視察が難しかったはず。ドローンはダムやトンネル、鉄塔に橋といった大型インフラの老朽化点検システムの目として注目が高まっているが、災害調査・被害確認においても有効だ。

 静岡県は翌日の4日、録画した1分ほどの動画データを公開した。報道各社がYouTubeなどで現地の動画を配信し、一般市民にも現地の様子が見られるようになった。5日には静岡県が公開した動画データを元にした3Dモデル「Atami Izusan Landslide 20210703」をYusuke Suzukiさん(@Y_Suzuki)が作成し、3Dモデルデータ共有サイト「Sketchfab」に投稿した

 Yusuke Suzukiさんは「ここが再び大きく崩れて二次災害が起こったりしてほしくありませんので、何かしら専門家のみなさんの参考になれば」とコメントし、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに基づいてのシェア・二次利用を許可。さらに同日、turuboxさん(@turubox)が、Yusuke Suzukiさんが作成したデータを元に作り上げたVRChatワールド「Atami Izusan Landslide 20210703(伊豆山土石流災害 崩壊地)」を公開した。

 静岡県はもともとドローンや地上レーザースキャナーによる3次元測量、点群データのオンラインプレビュー、マシンコントロール技術などを導入したICT建設機械による施工など、ICTを活用する工事を推進してきた自治体だ。また、自治体で計測したデータをG空間情報センターで公開することで、無償での二次利用にも対応してきた。

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