実施人口は16年で2倍! 「筋トレ」を日本の成長戦略の柱に置くべき理由スピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2021年07月27日 09時36分 公開
[窪田順生ITmedia]

 「筋トレ市場」が盛り上がっている。

 富士経済の調査によると、2020年のプロテインパウダーの市場規模(見込み)は前年比17%増の680億円となった。コロナ禍でさまざまな業界で消費の低迷が見られたが、外出自粛による運動不足解消のため、「家トレ」による需要が増しているという。

 また、筋トレ愛好者に欠かせない「フィットネスクラブ」も復活の兆しを見せている。

 多くのマシン、インストラクターを擁するいわゆる「スポーツジム」は「三密回避」のために退会者が増加して倒産や廃業する企業も出てきているが、「無人」「24時間」をウリにした「エニタイムフィットネス」の会員数は昨年5月を底に持ち直している。21年3月期決算説明資料によれば、総合型クラブに比べ売上高の落ち込みは小さく、営業利益はコロナ前を上回っているという。

オンラインフィットネス市場が伸びている

 インストラクターからリモートで指導を受けるオンラインフィットネス市場も活況で、調査会社Report Oceanによれば、世界のオンラインフィットネス市場は20年から25年にかけて年平均成長率33.1%で伸びていく。既に米国や中国ではテクノロジー企業が次々と参入して新しいサービスの提供を開始しており、この流れは日本にもやってくるはずだ。

 要するに「大きなスポーツジムに会員をたくさん集める」というビジネスモデルが打撃を受けているだけで、筋トレそのもののマーケットはコロナの逆風の中でも力強い成長を続けているわけだ。

 これはちょっと考えれば当然の結果だ。「健康志向」という世界的なトレンドに加えて、コロナによって日本人が「体を鍛える」ことを、真剣に考えた1年はなかったからだ。

 ピップが20年2月、日本全国47都道府県の有職者4700人に対して、自身の健康に関する意識調査を実施したところ、「健康意識が高まった」人が7割もいた。

 しかも、注目すべきはそこで「新たに始めたケア・対策」として、「筋トレ」を挙げた人がかなりいたことだ。20代男性では「筋トレ」(33.1%)がジョギング・ランニングを抑えて1位、20代女性でも「筋トレ」は24.4%で、人気のヨガ・ストレッチ(27.4%)とそれほど変わらない。

 つまり、コロナ禍によってさらに高まっている「健康意識」もあって、「筋トレ人口」が急激に増えている可能性があるのだ。だからというわけではないが、コロナ後の日本経済を考えたとき、「筋トレ」を成長戦略の柱に置くことを真剣に検討してもいいのではないか、と個人的には思っている。

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