新生ハンズが地方に大量出店? 「王者」カインズの東急ハンズ買収から見える、意外な未来ニトリの背中も見えてきた(1/4 ページ)

» 2022年01月26日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

 2021年末、東急不動産ホールディングス(HD)のグループ企業であった東急ハンズ(以下、ハンズ)が、ホームセンター最大手カインズの傘下入りを発表した。大都市生活における「住まいと住生活・手づくり関連の製品・道具・工具・素材・部品の総合専門小売業」として歴史も長い同社には思い入れのあるファンも多く、この会社がM&Aの対象となったことは、大きな話題となった。ただ、業績をひもとけば、その経営は決して楽ではなかったようだ。

コロナだけではない、業績不調の原因

 次の図表は、ハンズの決算公告から抜粋した業績データだ。

東急ハンズ決算公告を基に筆者が作成

 16年〜20年3月期の売り上げはほぼ横ばいで推移していたが、21年3月期は緊急事態宣言による商業施設の営業規制などの影響を受け、大幅な減収となった。経常利益はほぼ一桁で推移、売上高経常利益率も1%以下とほとんど収益が出ていなかったところに、コロナ禍の直撃で大幅赤字となってしまった。当期純利益も見ると赤字の期が多く、これは不採算店舗の整理が続いていたということであり、コロナ前からハンズは悩ましい経営状況にあったことが分かる。

 厳しい状況に追い込まれたのは、ECの浸透に伴う「店舗のショールーム化」が主要因であるといわれている。ハンズは多種多様な雑貨のセレクトショップであり、センス・目利きにより、世に知られる、あるいはブームとなった商品も多い。こうした「ロングテール戦略」といわれる、売れ筋以外にも多様な商品を取りそろえ、スタッフの説明力で良さを伝えていくことが、ハンズの魅力だったが、無尽蔵に品ぞろえ可能なECの普及によって、優位性を失った。それどころか、ハンズが人件費を負担している店舗スタッフの知識豊富な接客を受けた上で、EC上の最安値で購入するという購買行動が一般化してしまえば、ハンズの立つ瀬がない。「ショールーム化」は、セレクトショップにとって、極めて厳しい環境変化だったのである。

 出店立地を主にショッピングモールへ定めたことも、結果としてあまりいい選択とはいえなかった。

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