日本企業に使いこなせるのか 過度な「優秀な人材」獲得競争に覚える違和感の正体組織文化を壊すリスクも?(1/5 ページ)

» 2022年01月26日 05時00分 公開
[高橋実ITmedia]

 長引くコロナ禍の中で、将来の見通しの不透明感が高まっています。さらに追い打ちをかけるように、全世界の半導体供給不足、原油の高騰を受けた物価上昇、自然災害など、社会情勢の不安定要素が多くなっています。企業では将来的な先行き不安から、将来の事業不安が顕在化しており、経営者の頭を悩ませています。

大手企業では「早期退職制度」が活発化

 上場企業を中心とした大手企業では、「早期退職制度」導入企業が大きく増えています。東京商工リサーチの調査によると、2021年の上場企業の早期・希望退職者募集状況は84社、1万5892人(人数を公表した69社の人数を合計、「若干名」は除く)にのぼっています。

出所:東京商工リサーチ「2021年上場企業『早期・希望退職』募集状況

 この規模は、この規模は、東日本大震災後の12年と同規模、リーマンショック後の10年の状況を上回る数字です。

 コロナ禍の長期化が原因のように感じるかもしれませんが、実は大手企業において、コロナ禍前の19年から早期退職者が増えており、年間1万人を超えていました。そこにコロナ禍が拍車を掛け、人材の流動化が一気に高まりました。

 筆者は今年で54歳になりますが、同年代の友人から「会社で早期退職制度の募集があり悩んでいる」というキャリア相談が増えています。新卒で入社し、ずっと働いてきた会社を離れ、片道切符の出向や転籍で第二のキャリアを歩み始めている友人も多くいます。

 もちろん、以前から大手企業では金融業界を中心に、50歳前後から取引先への出向・転籍は行われてきましたが、昨今は業界を問わず早期退職制度を導入する企業が増えています。では、なぜ大手企業で早期退職制度が増えているのでしょうか?

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