直前になって2年間猶予の電子帳簿保存法、企業はどう対応すべきか? 専門家が語る(1/3 ページ)

» 2022年01月19日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 大改正となった電子帳簿保存法。電帳法自体の目指す趣旨は大事なことであり、今回の法改正はそれに向けた大きな第一歩だ。一方で、特に電子保存義務については、対応期限が短く、影響範囲が大きいこともあり、混乱が生じた。

 青色申告の取消告知、「直ちには取り消さない」、2年間の猶予……と今回の電帳法改正の、二転三転した流れを振り返る。そしてこれからの行政と企業の対応のあり方を、現場の状況も理解している立場から、弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所代表弁護士・税理士の小野智博氏と、SansanのBill One Unitプロダクトマーケティングマネジャーで公認会計士でもある柴野亮氏が語る。

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所代表弁護士・税理士の小野智博氏(左)と、SansanのBill One Unitプロダクトマーケティングマネジャーで公認会計士でもある柴野亮氏(右)

帳簿の電子化が遅れた日本

——2022年1月の電子帳簿保存法改正は、厳しいルールでがんじがらめにしていた過去のあり方を変え、ルールは少なく、違反した際の罰則は厳しくと、大きく方針転換した。これによって、これまで全くといって進んでいなかった日本企業の帳簿類の電子化も進展が期待される。実際の企業の声も含め、今回の法改正をどう評価しているのか。

小野氏 帳簿関係に限らず日本企業の書類の電子化は、米国、諸外国と比べると遅れていた。しかし企業側も行政側も想定していなかったコロナの影響は大きくて、DXを急速に進めなくてはいけないという必要に迫られた。

 今回の法改正は、検討が十分でなく民間のニーズを聞かず、急ぎすぎたという批判もある。しかし、テレワークで仕事をしなくてはいけない企業と、それを制度的に整えないといけない行政との間で迅速に対応を進めてきたということだろう。

 その中で、電帳法という企業がいつまでにやらなければいけないという義務を課す改正となった。どんな準備が必要で、どんなフローが必要か、その部分の十分な精査と期間を取って企業に対応を促すところは、もう少しあってもよかったかと思う。

——日本で遅れた理由はどこにあると見ているか?

小野氏 日本企業では、税理士とのやりとり、税務署とのやりとりが伝統的に紙ベースだった。そしてそれは、紙でのやりとりが可能だった地理的な状況、保存の量があった。

 米国では、国土が広くて税理士、税務署へのアクセスが悪く、紙では対応が難しいため電子化が早かった。民間でも、DXによって効率化やメリットが大きいと感じればすぐにかじを切る風土があった。

柴野氏 電帳法がなぜこれまで普及しなかったかは、メリットが享受できなかったという点が大きい。従来は、紙で受け取った書類を電子データで保存する場合、紙と電子のデータが一致していることを確認する定期検査が必要であった。つまり、電子保存してもすぐには紙を破棄することはできなかった。一定期間紙を保存するのであれば、電子保存するメリットは少ないものであったということだ。今回の改正で初めて、電子保存後、一致を確認できればすぐに破棄が可能となった。ようやく業務フローに馴染んだ形になってきた。

 帳簿の電子化には、入口と出口がある。コロナ禍でテレワークに向き合わなければいけなくなり、請求書など紙が中心の業務の電子化が進んだが、それは入口だけだった。最終的に出口である保存の部分は要件が厳しかった。電子化のメリットがないなら紙で……となってしまっていた。今回、やっと入口も緩和され、出口も緩和された。

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