攻める総務

研修で不正は防げない!──「コンプラなんて他人事」の社員を変えるものとは研修とは“真逆”のアプローチ(1/4 ページ)

» 2021年12月08日 07時00分 公開
[BUSINESS LAWYERS]

本記事は、BUSINESS LAWYERS「企業ブランドを向上させるコンプライアンスの設計術 ESG/ SDGs経営と企業コンプライアンスの合流点」(文:三浦悠佑弁護士/2021年9月17日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。

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1.企業コンプライアンスとブランディング

 本稿は、企業コンプライアンス活動の中でも、特に組織風土の醸成の手法についてご紹介するものです。法律中心の企業コンプライアンスの世界にブランディングの手法を持ち込み、企業不祥事が起こりにくい「ジブンゴトの組織風土」を作るとともに、ESG/SDGs経営を実現させよう、というのが本稿のエッセンスです。

 これまで、企業コンプライアンスとブランディングが同時に語られることはほとんどありませんでした。しかし、もともと両者は「企業理念の実現とそのための組織づくり」という基本的な目的を共有しています。また、最近ではESG/SDGsの潮流によってますますお互いの距離が近づいています。

 他方で、両者はそれぞれ法律とマーケティングという異なる分野を土台として発展してきた歴史があり、得意とする企業活動も異なります。そのため、いきなり「ブランディングと企業コンプライアンスの融合」といわれてもイメージが沸かない人も多いかもしれません。

 そこで、まずは企業コンプライアンスにとって身近な問題である、組織風土のお話から始めたいと思います。

2.知識や制度の整備だけでは、企業不祥事は防げない

 私はこれまで、国際カルテル事件、品質偽装事件、不適切販売事件から、時には会社の事業そのものが詐欺であった事件など、数多くの企業不祥事事件の処理と再発防止に携わり、企業不祥事事件に関与した人々の声を聴いてきました。

 企業コンプライアンス活動と聞くと、多くの人が法律知識の周知を目的とした研修や、制度の整備、個人のモラルの向上といった活動を思い浮かべると思います。しかし、それらの活動だけで企業不祥事が防げるかというと、必ずしもそうではありません。

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