リテール大革命

LINEミニアプリにスカウター? パルコ・H2OリテイリングのDXリーダーが語る、物があふれた時代の百貨店長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」 “百貨店の未来”編(1/5 ページ)

» 2021年12月01日 07時00分 公開
[酒井真弓ITmedia]

連載:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」

東急ハンズCIO・メルカリCIOなどを務め、現在は独立してプロフェッショナルCDO(最高デジタル責任者)の道を進む長谷川秀樹氏が、個性豊かな“改革者”をゲストに酒を酌み交わしながら語り合う対談企画。執筆はITライター・ノンフィクション作家の酒井真弓。


 プロフェッショナルCDO(最高デジタル責任者)の長谷川秀樹氏が、改革者と語り合う本対談。今回のゲストは、パルコ執行役員、林直孝氏と、阪急阪神東宝グループで、阪急阪神百貨店やイズミヤなどを傘下にもつエイチ・ツー・オー リテイリング執行役員、小山徹氏。

左=小山徹氏(エイチ・ツー・オー リテイリング執行役員)、右=林直孝氏(パルコ執行役員)

 林氏は、新卒でパルコに入社し、今年で30年目を迎える。30年もいれば何度か「もう辞めてやらぁ」と思ったことはあったそうだ。それでも結果的にパルコ一筋を貫いたのは、上司から部下への権限移譲が早く、趣味の延長線上でさまざまな企画・事業に挑戦できたからだという。入社2年目のときには、バルセロナ五輪を機に日本でも盛り上がり始めたバスケットボールに目をつけ、会社を飛び出し、関係者や後援者を巻き込んで、渋谷パルコ近くの駐車場で3on3大会を開催した。

 対して小山氏は、日本IBM、ファイザー、PwCなど、業界を超えた転職をしながらキャリアを積んできた。2014年、三越伊勢丹ホールディングスで顧問 兼 三越伊勢丹システム・ソリューションズ代表取締役として構造改革を推進中に、林氏や長谷川氏と出会った。20年に独立し、現在は複業家としてリテールを中心に活動している。

 対照的なキャリアでありながら、それぞれDXを率いるリーダーとしてショッピングセンターや百貨店の革新を担っている林氏と小山氏。両者が今考える、百貨店ビジネスの課題、新たな顧客接点の創出、そして、これからの接客の形とは。

動画で見る「IT酒場放浪記」

記事にできなかったあれこれ、取材の裏側をYouTubeでご覧いただけます。


20代は振り向くか? 百貨店ビジネスの現在地

長谷川: 今の20代、30代に、百貨店で物を買いたいと思わせることはできるかな?

小山: 昭和の時代、お客さまは新しい発見、新しい体験を求め、「百貨店に行けば何かあるかも」と期待を寄せていてくれました。でも、今の20代、30代、そして、生まれたときからスマホがあるデジタルネイティブ世代に同じやり方は響きません。まず、お店に来ない。「ネットで買えちゃうのに百貨店って何であるの?」という感覚ですね。

 事実、百貨店業界の売上規模は10兆円から半分まで縮小しています。10年後に若者が使うものがまだスマホかどうかは分かりませんが、少なくともデジタルが後退してリアルに回帰することはありません。今まで以上に価値がないと、リアル店舗にお客さまは集まらないと思います。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.