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観客1万人がマスクを着ければ新規感染者は1桁? スパコン「富岳」で五輪観戦をシミュレーション

» 2021年07月06日 21時11分 公開
[樋口隆充ITmedia]

 文部科学省は7月6日、東京オリンピック・パラリンピックの競技会場である新国立競技場での新型コロナの感染リスクについて、理化学研究所(理研)のスーパーコンピュータ「富岳」を使った飛沫感染のシミュレーション結果を発表した。マスクを着用した観客1万人が競技を4時間観戦した場合の感染リスクは、最悪のケースでも5人以下という。

photo 新国立競技場(2020年1月)

 理研は東京都内の市中感染率を約0.1%と仮定し、国立競技場の1階席に観客が隙間なく着席するケース、空席ありで着席するケースそれぞれに、風向きの前後を考慮した4パターンで試算した。

photo シミュレーションの条件

 その結果、観客が間を空けて座り、競技場の設計通りに後方から風が吹く場合に、新規感染者は限りなく0に近くなる一方、密に着席し、前方から風が吹いた場合は全観客に対し4.7人の新規感染者が出るという。ただし、観客がマスクをしなかった場合のシミュレーション結果について文科省は公表していない。

photo 風が後方から吹く場合のシミュレーション
photo 前方から風が吹く場合のシミュレーション

 萩生田光一文科相は6日の会見で「観客がマスクを着用しない場合は感染リスクが高まるが、一般的には観客にはマスクを着用してもらうし、一定程度間隔を空けて座ってもらうという前提なので、国立競技場に限っては限りなく感染リスクを下がられることが科学的に証明できた」と話した。

 大会の開催に向けては、観客数に関する議論が佳境を迎えている。萩生田大臣は無観客開催に関する報道陣の問いに「専門家が言うように国立競技場内でのクラスタ発生のリスクはないと科学的に証明されたが、一定程度の人員が集まるとその前後で人流が発生する。仮に観客を入れるということになればゲートを絞って時間差で入場してもらうことも組織委員会がシミュレーションしていると思う。方向性は(組織委員会や東京都などを交えた)5者協議の結果を待ちたい」と述べるにとどめた。

萩生田大臣の記者会見(出典:文部科学省公式YouTubeチャンネル)

 文科省によると、国立競技場は客席に設置したファンから場内に風を送り込み、競技フィールドの上昇気流を使って空気を循環させる仕組みを採用しているという。大会のメイン会場の一つである国立競技場では、開閉会式の他に、サッカーや陸上のトラック競技を実施予定。

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