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新型Switchのちぐはぐな仕様、狙いは“巣ごもり携帯機”? 新機能を読み解く(1/2 ページ)

» 2021年07月07日 14時04分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 任天堂が7月6日に家庭用ゲーム機「Nintendo Switch」の新モデルとして発表した「Nintendo Switch 有機ELモデル」。旧モデルでは6インチだった液晶ディスプレイを7インチの有機ELディスプレイに変更し、本体ストレージも32GBから64GBに強化。本体スピーカーを変更した他、背面スタンドも新しい機構を採用し、テレビなどへの画面出力に必要なドックには有線LAN端子も搭載した。

photo Nintendo Switch 有機ELモデル(公式サイトから引用)

 しかし待望の新型モデルにもかかわらず、SNS上の評判は賛否両論だ。処理性能が向上しているか明らかになっていないため、ヘビーユーザーからは購入を悩む声が出ている。一方、価格が旧モデルから5000円値上げした3万7980円になったためか、ライトユーザーからは旧モデルや「Nintendo Switch Lite」で事足りるという意見が出ている。

 確かに、新モデルは旧モデルから強化された点がある一方、有機ELディスプレイやスピーカー、スタンドは携帯モード向け、有線LANはTVモード向け──と、一見方向性がちぐはぐで、ヘビー・ライトユーザー双方にとって中途半端だ。

 では、今回の新モデルは一体どんな需要を見込んだ製品なのか。恐らくはコロナ禍の中、家にいながら携帯モードでプレイする「巣ごもり携帯機」としての立ち位置を狙ったのではないかと考えられる。

「テレビの取り合い」を考慮か

 新モデルが想定しているとみられるシチュエーション、それは「コロナ禍でテレビが奪い合いになり、家にいるのにTVモードでゲームができない状況」だ。外出自粛が続き、家族やパートナーが家にそろっている状況では、テレビは取り合いになる。そうなると、特に子供はテレビでゲームを遊びにくくなるだろう。

 そこでディスプレイに有機ELを採用したり、サイズを拡大したりすることで画面を見やすくし、携帯モードでの遊び心地を改善したと考えられる。背面スタンドの可動域が広がり、スピーカーが新しくなったのも同様だ。「テレビは使えないが、何人かで一緒にゲームがしたい」といった場面で、本体の画面をシェアしながら遊びやすくしたとみられる。

photo 本体をシェアしながら遊ぶ時のイメージ

 旧モデルやSwitch Liteとのローカル通信にも対応しているため、すでに兄弟や姉妹が本体を持っている場合は、互いに携帯モードで通信して遊ぶことも可能だ。バッテリーが旧モデルから強化されていない理由も、家にいれば充電に悩む場面が少ないためと思われる。

photo 公式サイトでも、携帯モードや画面をシェアした状態でのプレイ画像が上部に掲載されている

 発売日の10月8日以降にリリースされるゲームソフトからもそれが伺える。家族向け、子供向けを意識したタイトルとしては、29日にパーティーゲーム「マリオパーティー スーパースターズ」、11月19日に「ポケットモンスター」シリーズ最新作で“ダイパリメイク”として話題の「ポケットモンスター シャイニングパール・ブリリアントダイヤモンド」が発売予定だ。

 これらはいずれも、他のプレイヤーと通信してのプレイを売りにしたゲームだ。一昔前ならハードを持ち寄ったり、家に集まってテレビで遊んだりできたかもしれないが、今はコロナ禍でそれも難しい。そこで携帯モード、オンライン通信でのプレイを想定しつつ、テレビが使えないことを前提に、画面の見やすさを強化したのではないか。

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