任天堂が7月6日に家庭用ゲーム機「Nintendo Switch」の新モデルとして発表した「Nintendo Switch 有機ELモデル」。旧モデルでは6インチだった液晶ディスプレイを7インチの有機ELディスプレイに変更し、本体ストレージも32GBから64GBに強化。本体スピーカーを変更した他、背面スタンドも新しい機構を採用し、テレビなどへの画面出力に必要なドックには有線LAN端子も搭載した。
しかし待望の新型モデルにもかかわらず、SNS上の評判は賛否両論だ。処理性能が向上しているか明らかになっていないため、ヘビーユーザーからは購入を悩む声が出ている。一方、価格が旧モデルから5000円値上げした3万7980円になったためか、ライトユーザーからは旧モデルや「Nintendo Switch Lite」で事足りるという意見が出ている。
確かに、新モデルは旧モデルから強化された点がある一方、有機ELディスプレイやスピーカー、スタンドは携帯モード向け、有線LANはTVモード向け──と、一見方向性がちぐはぐで、ヘビー・ライトユーザー双方にとって中途半端だ。
では、今回の新モデルは一体どんな需要を見込んだ製品なのか。恐らくはコロナ禍の中、家にいながら携帯モードでプレイする「巣ごもり携帯機」としての立ち位置を狙ったのではないかと考えられる。
新モデルが想定しているとみられるシチュエーション、それは「コロナ禍でテレビが奪い合いになり、家にいるのにTVモードでゲームができない状況」だ。外出自粛が続き、家族やパートナーが家にそろっている状況では、テレビは取り合いになる。そうなると、特に子供はテレビでゲームを遊びにくくなるだろう。
そこでディスプレイに有機ELを採用したり、サイズを拡大したりすることで画面を見やすくし、携帯モードでの遊び心地を改善したと考えられる。背面スタンドの可動域が広がり、スピーカーが新しくなったのも同様だ。「テレビは使えないが、何人かで一緒にゲームがしたい」といった場面で、本体の画面をシェアしながら遊びやすくしたとみられる。
旧モデルやSwitch Liteとのローカル通信にも対応しているため、すでに兄弟や姉妹が本体を持っている場合は、互いに携帯モードで通信して遊ぶことも可能だ。バッテリーが旧モデルから強化されていない理由も、家にいれば充電に悩む場面が少ないためと思われる。
発売日の10月8日以降にリリースされるゲームソフトからもそれが伺える。家族向け、子供向けを意識したタイトルとしては、29日にパーティーゲーム「マリオパーティー スーパースターズ」、11月19日に「ポケットモンスター」シリーズ最新作で“ダイパリメイク”として話題の「ポケットモンスター シャイニングパール・ブリリアントダイヤモンド」が発売予定だ。
これらはいずれも、他のプレイヤーと通信してのプレイを売りにしたゲームだ。一昔前ならハードを持ち寄ったり、家に集まってテレビで遊んだりできたかもしれないが、今はコロナ禍でそれも難しい。そこで携帯モード、オンライン通信でのプレイを想定しつつ、テレビが使えないことを前提に、画面の見やすさを強化したのではないか。
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