10年で116万台減少! 「世界一の自販機大国ニッポン」はなぜ衰退したのかスピン経済の歩き方(1/5 ページ)

» 2021年06月23日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

 日本人は「日本の○○が世界一」という話が大好物だが、その中でわりとメジャーなものに「日本は世界一の自販機大国」というものがある。

 普及台数では米国に及ばないものの、人口比にすると世界一の多さであることに加えて、他国では別々の自販機で売られることが一般的な、温かい飲料と、冷たい飲料が一つの自販機で売られるなど、高い技術力がある。

 また、日本中の「屋外」に設置されていることも「自販機大国」たる所以(ゆえん)である。わが国では、人の往来の少ない海岸から田んぼの真ん中など全国津々浦々に自販機が行き届いている。実はこれはかなり珍しい光景だ。海外では、屋外に設置すると、不届き者が破壊して金や商品を奪ってしまうことが圧倒的に多いからだ。

 つまり、自販機は、日本の技術力や豊かさを体現しているサービスだけではなく、治安の良さや、日本人の民度の高さを象徴した「文化」といった側面もあるのだ。

「日本は世界一の自販機大国」といわれているが……(写真提供:ゲッティイメージズ)

 だが、奢(おご)れるものは久しからず、ではないが、そんな「世界一の自販機大国」にかげりが見えてきている。「衰退」に歯止めがかからないのだ。

 一般社団法人日本自動販売システム機械工業会によれば、日本の自販機普及台数は2000年に560万台を突破してから「緩やかな減少」をして、10年後の2010年には40万台減って520万台になった。

 では、それからさらに10年経過した20年にはどうなったかというと、404万5800台。この10年でなんと116万台が消えた。00年から10年までの3倍のスピードで減っている。

自販機の普及台数が減少している(出典:日本自動販売システム機械工業会)

 この激減を引き起こした「犯人」と目されているのが「コンビニコーヒー」だ。2010年代からコンビニ各社が力を入れている「レジ横の淹れたてコーヒー」が普及したことで、自販機で缶コーヒーを購入していた客をガッツリと奪われてしまったというのだ。

 ただ、もっと本質的なところでいえば、やはり「人口減少」によるところが大きい。現在、日本では「人口増時代に調子に乗って広げすぎたインフラが人口減少に転じて維持できない」問題がいたるところで起きている。

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