“暗号スマホ”とはどんなモノか 「FBIのビジネス流儀」はとことん世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ)

» 2021年06月17日 08時13分 公開
[山田敏弘ITmedia]

 先日、海外から驚きのニュースが報じられた。

 英BBCは6月9日、「米豪などの捜査当局は8日、米連邦捜査局(FBI)が立ち上げた暗号化メッセージアプリ『ANOM』を使った国際おとり捜査で、18カ国で800人以上を逮捕したと発表した」と報じている。

 「800人以上を逮捕」と言うだけで驚きだが、多国籍な法執行機関によるこのオペレーションは「トロイの盾」と名付けられていた。ほかの情報をまとめると、その捜査の規模の大きさに驚かされる。

 欧州刑事警察機構(ユーロポール)によれば、捜査に協力した国は、オーストリア、オーストラリア、カナダ、デンマーク、エストニア、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、リトアニア、ニュージーランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、イギリス、アメリカだ(参照リンク)。

FBIは暗号化メッセージアプリ「ANOM」を使って、800人以上を逮捕(画像はイメージ、出典:ゲッティイメージズ)

 家宅捜索などを行なったのは700カ所以上。コカインは8トン、大麻は22トン、覚醒剤(メタンフェタミン)は2トンが押収された。さらに、250丁の銃器や、高級車は55台、日本円にして50億円以上の現金や仮想通貨が押収されたという。過去最大規模のおとり捜査だといわれている。

 今回のニュースで特に興味深いのは、このおとり捜査に、暗号化された携帯とアプリが使われたことだ。しかも事件で明らかになったのは、犯罪者たちが使うこうした暗号化ツールの市場がきちんと存在しており、ビジネスとして成り立っていたことである。

 FBIは、犯罪者コミュニティーの間でこのスマホのシェアを高めることに成功していた。そもそも犯罪者御用達の暗号スマホとはどんなモノなのか、またどのような形で使われていたのだろうか。捜査資料をひも解いていくと、そこには「FBI流のビジネス流儀」が浮かんできた。

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