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ISVの「Kubernetes Operator」対応を支援 レッドハットの新たなパートナー戦略とは?

» 2020年12月25日 15時00分 公開
[谷川耕一ITmedia]

 レッドハットは12月頭に、コンテナプラットフォーム「Red Hat OpenShift」(以下「OpenShift」)のISVパートナーを支援するプロジェクト「Red Hat Kubernetes Operator Project」を始めた。ISVは「独立系ソフトウェアベンダー」を意味し、OpenShift上で動作するソフトウェアの開発元を指す。今回の施策ではISVパートナーに、コンテナの運用自動化ツール「Kubernetes Operator」の活用ノウハウを提供し、基準を満たした企業を「認定Operator」に指定する。

 Kubernetes Operatorは、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」を用いたコンテナの複雑な運用をコード化し、自動化するツール。Kubernetes環境で動くソフトウェアのインスタンス作成、設定、運用などをシステム側がユーザーに代わって実行し、適切なリソース配置、運用の効率化、信頼性の向上を進めてくれる。レッドハットは、このツールを活用することで、エンドユーザーのコンテナ運用の工数を削減できると捉えており、普及に向けて本腰を入れたというわけだ。

 レッドハットは、今回の施策で認定OperatorになったISVに対して、OpenShift上でソフトウェアが動くことを単に認めるだけでなく、動作を保証する。また、Kubernetes Operatorを使ってソフトウェアの運用を自律化する方法をレクチャーする。ISVはレッドハットから学んだノウハウを自社製品の開発に生かすことで、Kubernetes Operatorに対応したソフトウェアやアプリケーションをユーザー企業に届けられる。

photo パートナー支援プロジェクトの概要

参加条件とメリットは

 支援プロジェクトへの参加条件は、(1)レッドハット製品を使ったソリューションをユーザー企業に提供する「Technology Partner」であること、(2)オンライントレーニングを受講すること、(3)担当窓口となる営業と技術者をアサインすること、(4)Kubernetes Operatorに対応予定のソフトウェア名を示すこと――の4つだ。

 これらをクリアした企業への具体的な支援は(1)Kubernetes Operatorを使ってソフトウェアを自動運用する環境の提供、(2)OpenShiftとKubernetes Operatorの技術に関するオンライントレーニングの実施、(3)Kubernetes Operatorの運用に関するコンサルティングや技術支援の実施――など。

 (1)の開発環境は、レッドハットの親会社にあたる日本アイ・ビー・エムが無償で提供する。(4)の技術支援は、コムチュア、サイオステクノロジー、リアルグローブ・オートメーティドの3社が有償で提供する。

 認定Operatorになった企業のソフトウェアは、米Red Hat、米Microsoft、米Google、米Amazon Web Servicesが2019年に共同で立ち上げた、Kubernetes Operatorに対応したソフトウェアの一覧を提示するポータルサイト「OperatorHub.io」に掲載する。

 さらに、日本で21年にサービス開始予定のマーケットプレース「Red Hat Marketplace」にも、認定Operatorの製品を登録。Kubernetes Operatorに対応したソフトウェアやアプリケーションを同サイト上で販売できるようにする。

photo Operatorに対応したソフトウェアの提供形態

 発表時点で、このプロジェクトへの参加を表明している企業は、伊藤忠テクノソリューションズ、SCSK、オージス総研、サイオステクノロジー、セゾン情報システムズ、ソリトンシステムズ、日商エレクトロニクス、NEC、日立製作所、富士通の10社。これらの企業は今後、自社のソフトウェアをKubernetes Operatorに対応させる予定だ。

ISV支援でOpenShift市場の裾野を広げる

 レッドハットは過去にも、OpenShiftのパートナー・エコシステムを拡大する施策に取り組んできた。例えば第一弾として、19年12月から「Red Hat OpenShift Managed Practice Program」を実施した。これは、OpenShiftのマネージドサービスを提供してくれるパートナー企業を募る企画。加盟したパートナーは、業務用アプリケーションをある程度内製できるユーザー企業を対象に、その運用効率化に取り組んだ。

 第二弾となる今回は、ISVパートナーを支援することで、よりクラウドネイティブな(=クラウド上での利用に適した)アプリケーションの開発・提供を促進する狙いがある。加盟したパートナーは、業務用アプリケーションを内製できず、ISVの製品をそのまま使っているユーザー企業も対象にし、コンテナの運用効率化を支援できる。

 第一弾と第二弾では、パートナー企業を経由して支援するユーザー企業の属性が異なる。日本でアプリケーションを内製できる企業は、一部の大手かIT活用に積極的な企業に限られるため、今回の施策の方がOpenShiftの裾野を広げる効果がありそうだ。

 レッドハットの金古毅氏(常務執行役員 パートナー・アライアンス営業統括本部長)は「今後3年で、パートナーが提供する100以上のアプリケーションを Kubernetes Operatorに対応させる」と話す。この目標が達成されれば、OpenShiftでクラウドネイティブ化されたアプリの存在が、日本でも珍しいものではなくなっているかもしれない。

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