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「Gmailどこいった」――Googleアプリのアイコン統一から考えるアイコンデザインの過去と未来(1/2 ページ)

» 2020年11月27日 11時20分 公開
[菊池美範ITmedia]

 「何のアイコンか分かりくい」「アップデートで発見しにくくなった」――Gmailのアイコンが10月に変わったことに対し、一部のユーザーからこんな声が上がった。メールアプリであることを直感的に認識しにくくなったというのだ。以前はMの文字下に影のように重なっていた封筒が、現在のデザインでは取り去られている。

photo Gmailアイコンのロゴマーク(旧)(新)

 特に今回の変更では、Gmailのアイコンがブルー、レッド、グリーン、イエローの4色デザインとなり、Google製の他のアプリと配色が統一された。これによってアプリの統一感は出た一方、色による区別が付きにくくなったとする声も上がった。

 このような例はGoogle マップでも発生した。アイコンがマップそのものをベースにしたデザインからマップ上にピンを刺すデザインへ変更されたとき、「Google マップ=地図のアイコン」と頭に刷り込まれていたユーザーは戸惑いを覚えた。

photo Google Mapアイコンのロゴマーク(旧)(新)

 Googleに限らず、アイコンのデザイン変更は珍しいことではない。Googleのアイコンを含めなぜデザインは変わるのか、今後はどんなデザインがトレンドになっていくのか、過去を簡単に振り返りながら考えてみよう。

アイコンは動作やユーザー体験の要

 まず前提として、なぜアイコンは存在するのだろうか。スマートフォンやPCのアイコンは、ユーザーが必ず触れるものだ。特にスマホを使うときは「認識→タップ」という2ステップが基本となるので、容易にスクリーン上で発見できることが最も重要なポイントとなる。アイコンは動作を起こすためのトリガーなのだ。

 ではハードもソフトもアップデートのサイクルが早いiOSやAndroidで、初期のアプリアイコンをそのまま使い続けたとしたらどうなっていただろうか。機能としては不足なくともユーザーに時代遅れの印象を持たれ、市場での競争力が低下していたかもしれない。コンシューマー向けの商用アプリは定期的なアイコンのデザイン変更が必要なのだ。

 デジタルデバイスを一定のサイクルで買い替えるユーザーの多くは、ハードやソフトの表向きの変化も好む。特にプラットフォームとなるハードウェアのアーキテクチャが大きく変化したときと、アプリが動作する環境のOSがメジャーアップデートしたときはデザインの変更が必須である。

 アイコンのデザインはユーザー体験も左右する。iOSではほぼ全てのアイコンが角丸の正方形の枠で囲まれているように、アイコンデザインは一定のルールに従っている。どんなプラットフォームであっても、ユーザーに正しく認識されるための前提となっているのだ。

photo iOSアイコンの一例。角丸の正方形で囲まれている

 Apple Watchの画面はスマホに比べればはるかに小さい。その分タップできる範囲や動作に制限があることから、視覚的な認識やタップ操作、音声ナビゲーションといったユーザーとの対話を最小限で済ますために導き出されたUIなのだろう。

photo Apple Watchのアイコンデザイン例

 このようにアイコンのデザインは、ユーザーが小さな枠の中にある情報だけでアイコンの存在を認知し、タップして、アプリの世界に入ってもらうためのものだ。この一連の動作でユーザーがストレスを感じなければアイコンデザインとして成功であり、もしここでユーザーがアイコンの発見に迷ったり、別のアプリと間違えてアイコンをタップしたとすれば、デザインに何らかの課題を抱えている可能性がある。

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