第1回では、ウィズコロナの時代〜オフィスの変革は、総務部にとってはまたとないチャンスであること、過去のITバブル、リーマンショック時と比べた総務部の役割とその違いを簡単に説明しました。
第2回では、チャンスと考えられる具体的な総務部の業務内容を「総務業務 36種MAP」を見ながら解説しました。
第3回では、総務部の「攻める」べき部分と「守る」べき部分、それらの経営効果を、財務的な観点と社員のモチベーションなどの観点で提言しました。
本記事(第4回)では、攻めるための前提知識や具体的な市場の理解、そして他社のまねごとでない“自分の会社らしい”戦略計画をどのように立てて、取捨選択(トリアージ)を実行すればよいのか、私の経験を踏まえてお話します。
総務部は社内ではサービス部門として機能すること、その顧客は社員(または施設ユーザー)であることは第2回でも触れました。顧客(社員)が業務を円滑に進められるように、働く場所(オフィスなど)の整備、社員の業務支援サービス、生活支援サービスの充実などを、他部門と連携してリードする役割があります。
総務部は、こうした業務を外部の専門業者に“発注”する立場でもあります。成果を左右するのは、発注者のプロとしての振る舞い、外部との付き合い方と言っても過言ではありません。なれ合いの業者とずっとお付き合いするメリットも多少はありますが、市場の中で最善の取捨選択を毅然(きぜん)と実行しなければ、社員・経営の期待には到底答えられません。大きな環境変化が起きる時に、変革が必要とされるのです。
今回のコロナ渦では、現在の発注先が本当に必要なサービスなのか、新たに何が必要なのかを取捨選択する必要があります。外部業者とのハード/ソフトウェアをまたいだ入れ替えは、総務予算内の配分組み替えを意味します。
では、総務部からみた外部の専門市場とはどのようなものでしょうか。筆者の実務経験や、ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)の「総務業務 36種MAP」を参考に、9つに分類してみました。あくまで、こちらは総務部から見た市場の分類です。実際はもっと多岐にわたり、市場が重複することもありますが、本質の理解を促進するためのざっくりとした分類です。
デベロッパー、ビルオーナー、プロパティマネジメント(ビル管理業者)、仲介、テナントレップなど
ゼネコン、設計事務所、コンストラクション(工事)業者など
オフィス設計、プロジェクトマネジメント、内装工事業社、家具什器メーカー、移転業者、機械設備、空調設備メーカーなど
清掃業者、各種設備メンテナンス業者、環境衛生、エネルギー、セキュリティ、廃棄物管理業者、危機管理商材、BCP関連業者など
受付、メールサービス、ドキュメント管理、文具備品、ビジネストラベル、外部倉庫、自販機、植栽業者など
飲物、社食カフェ、リラックス設備、運動器具、グリーン、社宅、ワーケーションなど
オフィス管理ツール、サービスアプリ、ビルアプリ、予約システム、購買&決済システムなど
総合プラットフォーム、リーガルテック、購買テック、人事テック、経理テック関連
(1)〜(8)を包括的に戦略を立て、計画、実施に至るプロセスコンサル
これらは毎年開催されている展示会「総務・人事・経理 Week」の巨大な会場でも、体感できるリアルな市場です。時代が変わっても安定している業者もある一方、毎年、新しく登場する“先端業者”もいます。
高度経済成長で右肩上がりのときは、段取りのよさ、スピード感にフォーカスすれば成果を出せたこともあり、特定の業者と阿吽(あうん)の呼吸で長い期間、お付き合いすることもメリットがありました。しかし環境が激変するタイミング(過去の例だとITバブル、リーマンショック)では、お付き合いする業者を大きく変えた総務部も少なくないことは、歴史が証明しています。
それでは、社員の働き方が変わるニューノーマルの時代に向け、総務部はどのような視点で、お付き合いする業者を取捨選択する必要があるのでしょうか。
「好み」でもなく「過去のお付き合い関係」でもありません。ビジネス商談との抱き合わせ契約も問題です。短期的な営業成績を優先して、業者を選ぶ風習から脱却する良い機会なのではないでしょうか。この風習を続けることは、「最適な業者を選定し、社員の生産性を上げる」という総務部の仕事を妨げ、社内で利害相反を生み、会社自体の長期的な競争力低下につながります。
予算の配分組み替え、お付き合い業者を取捨選択する方法は、会社によってさまざまですが、私の実務経験と昨今の多くの企業動向からみると、意外とシンプルです。
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