「Internet Explorer」が終わる日 代役はEdgeでもChromeでもない“あのブラウザ”か「Microsoft 365」でのサポートが終了

「Internet Explorer」(IE)で「Microsoft 365」が正常に動作しなくなる。問題はそれだけではない。専門家は「IEがWebブラウザの選択肢から外れる日に備えて、対策をすべきだ」と警鐘を鳴らす。

2020年10月27日 05時00分 公開
[Mike GleasonTechTarget]

 Microsoftのサブスクリプション形式のオフィススイート「Microsoft 365」が、2021年にWebブラウザ「Internet Explorer 11」(以下、IE 11)で正常に動作しなくなることが明らかになった。かつて支配的なWebブラウザだったIEは、一段と影が薄くなる。

 2020年8月、MicrosoftはMicrosoft 365におけるIE 11のサポートを1年以内に終了する計画を発表した。まず同社は2020年11月30日にユニファイドコミュニケーションツール「Microsoft Teams」のIE 11での動作を制限し、正常な動作を保証しなくなる。他のMicrosoft 365のアプリケーションおよびサービスも同様に、2021年8月17日をもってIE 11での動作保証をやめる。

 Microsoftはこの発表の中で、IE 11を廃止するわけではなく、IE 11との依存関係にあるアプリケーションは引き続き動作するだろうと説明している。「Windows 10」の更新プログラムを通じてIE 11の更新プログラムの提供を続けるとの説明もある。ただし、この発表はIEの終わりが近いことを示している。業界の専門家は、ユーザーは他のWebブラウザを使う準備を整えなければならないと指摘する。

気になるIEの“代役”は

会員登録(無料)が必要です

 IEのブランドは低迷している。MicrosoftはIEに代えて、2015年にリリースしたWebブラウザ「Microsoft Edge」を普及させようとしたが、Edgeの市場シェアは伸び悩んだ。そこでMicrosoftは巻き返しを目指し、2020年1月、オープンソースのWebブラウザ「Chromium」のコードをベースに再開発したEdgeを投入した。ChromiumのソースコードはGoogleが開発し、同社のWebブラウザ「Google Chrome」で使用されているものだ。Microsoftは2021年に、レガシー版Edgeのサポートを終了する。

 かつてIEはWebブラウザ市場を席巻していたが、近年はその存在感を失っていた。Webトラフィックの分析を手掛けるStatCounterによると、IEの全世界における市場シェア(トラフィックベース)は2000年代初頭に90%程度だったものの、2020年は1%台まで落ち込んでいる。Webブラウザ市場は、2020年9月時点で66%台のシェアを持つChromeが支配しており、Appleの「Safari」が16%台でそれに続いている。

移行の準備

 IE 11は広く使われているわけではないが、企業の重要業務を処理するレガシーアプリケーションの動作環境としてIE 11が利用されているケースは珍しくない。こうしたアプリケーションは開発者が更新しなくなっているため、動作させるには古いハードウェアやソフトウェアが必要になっているのだ。

 「大抵の場合、古いシステムをきちんと機能する最後の瞬間まで使い続けるのは、リスクはあるが安上がりで簡単な方法だ」。調査会社Constellation Researchのアナリスト、ディオン・ヒンチクリフ氏はそう語る。

 IEは最期の時が迫っている。「いまだにIE 11を必要とする企業も、別の選択肢を探し始める必要がある」。ITサービス会社Emmanuel Technology Consultingのオーナーであるウィリアム・ウォーレン氏はそう語る。

 ウォーレン氏が顧客に対して、IEの代わりに使用することを推奨しているWebブラウザは、Chromeか「Firefox」だ。同氏はFirefoxの方がChromeよりもスムーズに動作し、プライバシーの扱いが優れていると捉えているため、Firefoxを好んでいるという。プライバシーの扱いに関して、Chromeはcookieを使ってユーザーの閲覧行動を追跡できるようにしていたと批判された過去がある。

 ITコンサルティング会社TNTMAXの技術ディレクターを務めるダニエル・ビート氏は、IEに依存している顧客に対して「アプリケーションやWebサイトをアップデートして、複数のWebブラウザをサポートできるようにすべきだ」と勧めている。特定のWebブラウザが古くなって正常に動作しなくなったときのために、そうした備えが必要だ。

TechTargetジャパン「読者ライター」募集のお知らせ

IT製品選定に関する記事をご執筆いただく「読者ライター」を募集します。記事を通じて皆さまの経験やノウハウを共有してみませんか? 応募はこちらから↓

https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/2009/25/news11.html

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

製品資料 株式会社ecbeing

法人間取引において欠かせない「基幹連携」をスムーズに行うためのノウハウ

基幹システムと他のさまざまなシステムを連携させる「基幹連携」は、B2B ECなどの法人間取引において欠かせない。本資料では、基幹連携のメリット、連携方法、連携する際の注意点について解説する。

製品資料 株式会社イグアス

クラウドファーストのさらに先へ――次世代型「運用監視」の実践的アプローチ

DXを推進する上で、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドへの拡張を避けて通ることは難しいが、その運用監視の難度は極めて高い。今後、DXの成否を分けるポイントとなるであろうハイブリッド/マルチクラウド運用監視における最適解は?

製品レビュー グーグル合同会社

企業向けブラウザを管理する「Chrome Enterprise Core」ガイドブック

世界中で広く利用されているChromeブラウザは、業務における重要なエンドポイントとなっているため、強固なセキュリティが必要となる。そこでChromeブラウザを起点に、企業が安全にWebへのアクセスポイントを確立する方法を紹介する。

製品資料 グーグル合同会社

「企業向けブラウザ」が持つ特徴とは何なのか?

ブラウザは企業にとって重要なエンドポイントの1つだ。攻撃の表面として扱われているため、セキュリティの複雑性も増し、脅威への対応を高度化する必要が生じる。そこで本資料では、企業向けブラウザの強みについて解説する。

製品資料 日本アイ・ビー・エム株式会社

複雑化するハイブリッドクラウドの運用管理、可観測性ツールでどう楽になる?

企業のITシステムはハイブリッドクラウドが当たり前になりつつあり、運用/管理の負荷が高まっている。そこで課題解消の鍵となるのがオブザーバビリティー(可観測性)だ。本動画では、可観測性を確保するツールの選び方を解説する。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
メインフレームを支える人材の高齢化が進み、企業の基幹IT運用に大きなリスクが迫っている。一方で、メインフレームは再評価の時を迎えている。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...