「アナリティクス」が変えた映画ビジネス 見えた成果と“根深い問題”データが支える映画製作の意思決定【後編】

アナリティクスが映画にもたらした果実とは何か。そして映画製作のあらゆる工程の意思決定にデータを活用する上で、どのような問題があるのか。

2020年09月16日 05時00分 公開
[Eric AvidonTechTarget]

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 ハリウッドでアナリティクスを活用した結果、比較的最近明らかになったことがある。出演する俳優の多様性が高いほど、観客の多様性も高くなり、動員数が多くなることだ。大手タレントエージェンシーCreative Artists Agency(CAA)が過去の映画を分析し、出演俳優の多様性と興行収入の関係を調べた。それで分かったのは、出演俳優の性別、人種、性的指向の多様性が高いほど、観客動員数が多くなることだった。

 俳優の多様性は製作姿勢を反映している。多様な人々を受け入れることは良いことだ。観客分析によってそれが事実であることが証明された。「データ同士を連携させることは、人と人のつながりを良くすることにも役立っている」と話すのは、コンサルティング会社Iverson Consultingのプレジデント兼CIO(最高情報責任者)兼CTO(最高技術責任者)、エリック・アイバーソン氏だ。アイバーソン氏は、CAAのCIO兼CTOを務めた経歴を持つ。

何が問題なのか

 ハリウッドのデータは、以前から連携が進んでいたわけではなかった。ストリーミング配信サービスなどのデータ収集源が増えて、データを集めやすくなり、データが複雑化すると、映画関連企業もビッグデータを活用する他の業界と同じ問題に直面した。

 その問題とは「整理されていないデータ」の対処だ。エンターテインメント関係の企業も、データの分断という問題に取り組まなければならなくなった。

 映画製作会社などエンターテインメント関連の企業は総じて、自社が持つ情報を社外秘にする傾向がある。オンラインや対面顧客のデータ、公的・私的ソースのデータ、ライセンスや放映権に関するデータなどだ。そうしたデータは、データウェアハウス(DWH)やデータレイクに放置されてきた。映画製作会社やその他の映画関連会社は、そうしたばらばらのデータを整理しなければならなかった。

 「ワークフローの追跡にどんどん時間がかかるようになり、スピードアップが必要だと感じていた」とアイバーソン氏は語る。収集するデータが増えるほど、それらが整理されていなければ、有効なワークフローを維持するのが難しくなる。

 何十年分ものデータを整理するという気が遠くなる作業を機械学習でスピードアップすることで、データ運用チームはこの大事業を成し遂げた。データの専門家は次々とワークフローを自動化していった。その結果、音楽やテレビなどエンターテインメント業界を構成するさまざまな企業が、データの連携に取り組むことを決めた。

 連携させたデータ同士は互いに結び付き合い、自律的に統計情報になる。そのため連携させていないデータより、飛躍的に多くの有意義な情報を生み出す可能性を持っている。「それがより良いインサイトやエクスペリエンスのもとになる」とアイバーソン氏は語る。このことは映画製作にも、他の製品を作るときにも当てはまるだろう。

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