Bリーグは、プロ野球とJリーグを超えられるか? 「B・J業務提携」の読み解き方池田純のBizスポーツ(1/5 ページ)

» 2020年10月20日 05時00分 公開
[池田純ITmedia]
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連載:池田純のBizスポーツ

プロ野球・横浜DeNAベイスターズの初代球団社長で、現在スポーツによる地域活性化などに取り組む一般社団法人さいたまスポーツコミッション会長、バスケットボール男子Bリーグ3部(B3)・さいたまブロンコスのオーナーを務める池田純氏が、スポーツビジネスの裏側に迫る連載「Bizスポーツ」。第7回では「業務提携」をテーマに、その難しさと協業の理想的な在り方を探る。

 最近、スポーツビジネスの世界で個人的に一つ、とても気になるニュースが流れていました。BリーグとJリーグが「業務提携」するという話題です。業務提携は、私がかねて経営者の世界で考えさせられ、まさにブロンコスの経営でも考えていた経営課題に関するワードでした。まず今回は、具体的な話をする前に、あくまで一般論としての業務提携の持つメリット、留意点について考えていきたいと思います。

出所:ゲッティイメージズ

 企業同士の協業の形態には大きく分けて以下の3つがあると私は考えています。

(1)業務提携・資本提携

(2)ジョイントベンチャー(JV)

(3)合併・買収

 いずれも、自社にない技術・ノウハウ・人材などの“強み”を取り入れ、ないしは“強み”を加速度的に増強し、事業目的を効率的に達成する上で有効なものとなります。そのうち、業務提携はA社とB社の強みを掛け合わせ、お互い「Win-Win」になることで成り立つものですが、相互メリットを維持し続けられなくなり、うまくいかなくなることも多いのが実情です。お互いが本質を見せず、本当に重要な部分をブロックして、自然消滅や解消という結果になりがちな印象もあります。そのため、一歩進むために「もっとお互い中身をみせましょう」という観点から、マイノリティーで株式を持ち合うなどの資本提携のフェーズに至ることもあります。

「業務提携」を勧めないワケ

 私は、経営者としてスタートアップ企業の顧問なども依頼されて務めていますが、業務提携という形はあまり勧めないようにしています。それは義務と権利、責任が結局ハッキリしないことが多いからです。協業を目指すなら、「51:49」の資本を出し合って合弁会社、JVをつくる形の方を私は好みます。

 それは、過去の経験からくる考え方です。私はディー・エヌ・エー(DeNA)の執行役員を務めていた2010年に、NTTドコモとの間で「エブリスタ」という合弁会社をつくり、初代社長を務めました。DeNAが持つデジタルやITコンテンツのノウハウと、NTTドコモが持つ携帯電話の販売力という“強み”を掛け合わせるとどうなるか――という発想から立ち上がったものです。

DeNAとNTTドコモが設立した「エブリスタ」(出所:同社公式Webサイト)

 電子書籍のUGC(User Generated Content=ユーザー投稿コンテンツ)のWebサービスをわれわれがつくって運営し、それをドコモの携帯電話に載せて店舗で売る。そうした2つの親会社それぞれの強みを掛け合わせることに成功した協業のビジネスモデルが確立された結果、エブリスタという事業サービスはいまだに残り、両親会社から独立したビジネスモデルとしてしっかりと今も収益を上げているようです。どちらかが主を取って、社長を出す。会社の支配権をどう取るかという「資本」と「経営の支配権」という2つの論理によって主従がハッキリする点も、JVが提携より自律的に機能しやすい理由の一つと私は考えています。

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