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“まるっと”しすぎ「デジタル庁」に期待できない理由、それでも期待したい理由本田雅一の時事想々(1/4 ページ)

» 2020年09月23日 16時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 政治の話に口を突っ込むつもりは毛頭ないが、そうは言ってもテクノロジー、インターネットは世の中のインフラ。日本という国の運転手が変われば、テクノロジー方面でもさまざまな変化が生まれるのは言うまでもない。

 「デジタル庁を可能な限り早期に設置する」と自民党総裁選の頃から掲げていた菅義偉首相は、残り任期が短い中、解散総選挙に向けて動かしていくのだろうから、私たちの生活や仕事、もっと言えば“稼ぎ”にもかかわる社会変革、環境の変化が何かしら起きることだけは間違いないだろう。

 果たしてデジタル庁という切り口がどういうものなのか。その名前も含め、あまりにも“まるっと”しすぎているようには感じられるが、デジタル庁というコンセプトが実効性を持つのかどうか、注目すべき点はいくつかある。

photo 菅義偉首相(写真提供:ロイター)

日本を“まるっとDX?”

 デジタル庁ってどうよ? という話題の前に、そもそもデジタル庁とは? という意識合わせをせねばならない。菅首相の話を総合的に考えるならば、要は日本の行政機関をデジタルトランスフォーメンションするため、省庁をまたいだ改革を行うための組織というところだろうか。

 デジタルトランスフォーメーションは「DX」とも略されて、いろんな企業が取り入れているから、多少、ITについて詳しくない読者層でもイメージできるだろう。

 例えば今年1月、米ラスベガスの「CES」にはデルタ航空のエド・バスティアンCEOが登場。航空業界を“DXしてきた”ここ数年の成果と今後のプランなどについて話し、コンベンションではどのような取り組みをしているのか大々的な展示を行った。

 ネットやアプリを活用し、業務用システム全体の構造だけでなく業務の手順や社内ルールなども含め、大胆にシステムを改良することで“当たり前を当たり前”にすることを目指したデルタ航空の取り組みは拍手喝采を受けた。

 属人的でプロセスが見えにくかったゲート変更、到着機材の遅れ、それに伴うさまざまな“行動すべきこと”を、業務システムとエンドユーザー向けアプリを接続し、適切に見せることで解決。今後は到着時間に合わせて移動手段を手配したり、宿泊手配の変更をかけたり、といったところまでDXの範囲を広げようとしていた。

photo デルタ航空のエド・バスティアンCEO(写真提供:ロイター)

 ご存じのように旅行業界は、それどころではない事態に陥っているが、情報システムと業務プロセスを高い視点で見直して、組織の構造から見直せばさまざまなプロセスが可視化され、流れも早くなり効率化する。

 既存業務を部分的にIT化をするのではなく、IT化することによる変化を組織の構造から運営まで幅広く最適化することがポイントとなる。

 特定企業でのDXはさまざまな事例があるから、ここであらためて紹介するまでもないが、業務改善と顧客体験の改善を同時に行えている例は枚挙にいとまがない。きちんと目標設定を行い、前に進めることができれば日本が変わることは間違いない。

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