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医療事務をどんどん自動化したくなる――病院のRPA導入体験談 雑務なくして精神負担減(1/2 ページ)

» 2020年09月11日 18時30分 公開
[谷井将人ITmedia]

 「一度RPAを使うと、どんどん自動化したい作業が出てくる。他の人の仕事も楽にしたいと思うようになる」――そんなサイクルが、滋賀医科大学医学部附属病院で生まれつつある。医療関係者が手を焼く精神的負担の大きい事務作業をRPAで自動化する取り組みが着々と進んでいる。

photo 滋賀医科大学のWebサイト

 同病院は2019年9月、「RPA推進対策プロジェクト」を発足し、日々の医療事務の自動化を目指して現場でのRPA活用に乗り出した。事務部門や経営管理部門、看護部、薬剤部など、さまざまな部署が抱える事務負担の解消が目的だ。

 そんな滋賀医科大学医学部附属病院で医療サービス課長を務める吉野孝博さんにRPA導入の背景と効果を聞いた。医療事務においては作業時間の短縮以上に、いかに従業員の精神的負担を軽くできるかが大きな評価ポイントになっていた。

負担は単純作業による精神的なもの

 病院スタッフは日々さまざまな業務をこなしている。多くの職種でメインとなるのは医療行為だが、他にも「患者のデータを取得して整理、集計する」「伝票の内容をデータに打ち直す」「複数人へのメールの送信」「研修会の受講状況チェック」といった事務作業が幾つもある。

 事務作業に割く時間は、部門にもよるが業務全体の約1割。こう聞くと多くはないように思えるが、スタッフはかなりの精神的な負担を負っているという。

 「事務作業は重要だが単純作業。できれば全部誰かに任せてしまいたいもの」(吉野課長)

 データミスは後の業務に響く可能性もあるため作業中は気を抜けない。何重にもチェックが必要で手間も掛かる。残業の原因にもなっており、精神や身体への負担が事務作業だけでなく、メインの医療行為にも悪影響を及ぼしてしまうかもしれないという懸念もある。

経験ゼロからRPA構築 現場の需要がそのままシステムに

 そんな中、同病院ではRPA開発ツールのベンダーからRPAのセミナーを受ける機会があった。院内で自動化したい事務作業を募るアンケートを行ったところ多くの意見が集まったため、RPAの導入に踏み切った。

 RPA推進対策プロジェクトに集まったのは事務部門や看護部など各部門の13人。RPA開発の経験はなかったため、ベンダーから講習を受けながら開発を始めた。現在ではRPA開発にも徐々に慣れてきて、早ければ5〜6時間で1つのRPAを構築できるようになっているという。

 これまでに作ったRPAは16個。薬を投与した患者のデータを集計するもの、経営会議の開催案内を出して出欠確認を行うもの、Excelに登録された宛名一覧を基にメールを送信するものなど、現場の需要に即したRPAが出来上がった。現時点では開発者本人の手元でテスト運用を行っている。

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