新型コロナウイルスの影響が拡大し始めた3月以降、在宅での食事や巣ごもり需要からスーパーマーケットやオンラインストアが活況を呈した一方で、営業自粛による休業や業態変更、営業時間短縮などで飲食店が大きなダメージを受けたといわれる。
この中でも特に影響が顕著だったとされるのが、人の移動の変化や夜間営業自粛の煽りを受けた、居酒屋やファミリーレストランなどのイートイン主体の業態だ。その一方でテイクアウトも可能で、ドライブスルーやデリバリー需要で業績がプラスとなったマクドナルドなどファストフード系レストランと明暗を分けたと考えられる。
しかし、こうした認識は本当に正しいものなのだろうか。これを確かめるべく、今回は日本全国にあるチェーン店(本稿執筆時で4891チェーン、84万4126店舗)の膨大なデータを持つ地図情報サービス「ロケスマ」を運営するデジタルアドバンテージの協力の下、店数が100を超える飲食業態の全チェーン店舗数の週ごとの推移をグラフ化した。集計期間は1月初週から8月後半まで。
比較のため、テイクアウト可能業態(ベーカリー、弁当、ハンバーガー、すし、たこ焼き、宅配ピザ、牛丼)の合計店舗数と、特に状況が厳しいとされるファミリーレストランと居酒屋を併せた合計店舗数のグラフも作成した。
これら3つのグラフの目盛りに注意して推移を追いかけてほしい。
チェーン全体でみれば、1月以降も店舗数はだんだんと減り続けているものの、比率でいえば1〜2%の減少幅で収まっている。テイクアウト可能業態については一見すると動きが激しく見えるが、これは店舗数を削減するチェーンがある一方で、コロナ後も店舗数を増やすチェーンもあるためで、それらが拮抗して全体でみれば減少幅は1%未満にとどまっている。
ところがファミリーレストランと居酒屋の合計店舗数に目を向けると、その減少傾向は顕著で、全体では4〜5%の減少となっている。
次のグラフは1月5日の週を基準に、先に挙げた3つのグラフの店舗数の変化を百分率で重ねてみた。
これらのグラフから、イートイン主体の業態とテイクアウト可能業態でコロナ禍の明暗を分けたというのは、企業からの声だけでなく、客観的なデータとしても示されていることが分かった。
なお参考程度に、上記のグラフ以前の18年1月から月ごとの店舗数の変化について、ファミリーレストランと居酒屋の2つの業態についてまとめてみた。集計対象は20年1月5日時点で100以上の店舗数を持つチェーンとしており、それより前の段階で100店舗を超えていたチェーンであっても、基準日の時点で下回っていた場合には集計には含んでいない。ファミリーレストランについては18年の時点では集計されていなかったチェーン(「四六時中」)もあるため、先ほどのグラフと数字が異なる点に注意してほしい。
このように時間をさかのぼってみても、ファミリーレストランと居酒屋で長期的なトレンドは異なるものの、20年に入ってから減少傾向を強くしていることが確認できる。
本記事はデジタルアドバンテージの店舗検索サービス「ロケスマ」に蓄積されたデータに基づいて制作されている。ロケスマにおけるデータは各チェーンのWebサイトで公開されている公式情報をベースに日次でクローリングによる更新が行われており、例えば「Webに登録されなかった休業・閉店情報」といったものは必ずしも実態を反映しない。また、チェーンの追加は随時行われており、日本国内に存在するチェーン店舗全てが網羅されているわけではないことに注意したい。本記事の店舗数の推移に関するグラフでは、対象となる期間全てでデータが揃っていることを前提としている。
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