「いつか必ず売り上げも利益も1兆、2兆と、豆腐屋のように数えられるようにしてみせる」
創業直後のソフトバンクで、2人しかいなかった社員に向かって、朝礼でそう宣言したという孫正義社長のエピソードはよく知られている。20年度に4.99兆円という国内最大の純利益を出したソフトバンクグループ(G)は、いまや創業時に目指した企業の姿に近づいたのかもしれない。
ソフトバンクグループの孫正義社長
この利益額は、日本企業として歴代最高だ。さらに世界に目を向けてもグーグル持ち株会社のアルファベットの2020年12月期の利益を上回るなど、GAFAに匹敵する規模となっている。
しかし、米通信スプリント売却の一時益や、世界的な株高、そして韓クーパンや米ドアダッシュといった投資先企業の大型上場など、偶然一時的な利益が重なっただけという見方もある。孫氏も「投資家の多くは、たまたまのたまたまが重なって、一時的な利益が積み重なったという見方だろう」という認識だ。
自らが「事実上の投資会社」と表現するように、実際、激変する株式市場の動向によって、ソフトバンクGの損益はジェットコースターのように変動している。連結の投資損益は7兆5200億円だったが、前期は1兆4100億円の赤字だ。
「これから先も、株式相場の上がり下がりで、上がったり下がったりする。ソフトバンクGにとっては1兆、2兆の赤字黒字はニューノーマル、あまり驚かない方がいい」。そんなふうに話す孫氏だが、目指す姿は継続的に大きな利益を生み出す仕組み作りだ。
創業以来のソフトバンクGの純利益の推移。決算発表資料では、ソフトバンクGに関する財務諸表の表記はすべて「兆」となっている
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近年、注目を集めている金融商品取引所への上場方法が「直接上場」という手法だ。世界的に一般的な手法である「IPO」と比較すると、直接上場は新株の発行(資金調達)を伴わない点で違いがある。直接上場のメリットはどのようなものがあるのだろうか。
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