金融の縦割りは崩れるか? 金融サービス仲介業で変わるもの(1/2 ページ)

» 2021年05月12日 09時09分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 金融サービス仲介業法制のスタートに向けて、普及推進および自主規制を行う業界団体「日本金融サービス仲介業協会」が4月22日に設立され、活動を開始した。

日本金融サービス仲介業協会の代表理事。左から小野尚副会長(SBI生命保険社長)、中村仁会長(400F社長)、落合孝文副会長(弁護士)

 金融サービス仲介業は、2020年6月に行われた法改正によって生まれる。2月からパブリックコメントが実施され、夏から秋にかけて施行される見通しだ。この金融サービス仲介業によって何が変わるのだろうか?

 銀行、証券、保険といった金融の各業種は、それぞれ銀行法、金融商品取引法、保険業法といった個別の法律に基づいて運営されている。そして、各サービスを仲介するには、銀行ならば銀行代理業、証券ならば金融証券仲介業、保険ならば保険募集人のライセンスを取得する必要がある。いわば、業態ごとの縦割り法制となっていた。

 しかし、貯蓄性保険と投資信託の比較など、ニーズが似た商品であっても規制する法律が異なるため、仲介業者が横断して商品を紹介することができないという課題があった。こうした問題を解消し、銀行、証券、保険のそれぞれのサービスを横断して仲介できるのが金融サービス仲介業だ。

縦割りで商品ごとに個別のライセンスを必要とした既存の仲介業から、横断して複数の商品を取り扱えるようになる

 日本金融サービス仲介業協会の代表理事副会長である小野尚氏(SBI生命保険社長)は、「縦割りだったものが、ワンストップでサービスが受けられるようになるのは画期的」だと評する。

 さらに、従来の仲介業とは異なる点もある。仲介業者が金融機関のパートナーとして扱われる点だ。従来の仲介では、仲介業者は金融機関に所属し、監督を受けなければならなかった。しかし金融サービス仲介業ではそうした制約がなくなる。

 他方、利用者保護のための新たな条件もある。特定分野に対する専門性が薄くなる懸念から、取り扱える商品は、複雑でなく高度な説明が必要ないものに限定される。

仲介業者が金融機関への所属を求められた既存の仲介業から、金融機関と仲介業者が対等のパートナーという位置づけに変わる
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