進化を続ける「VTuber」ビジネス、今どうなってるか知ってる?(1/3 ページ)

» 2021年05月13日 20時00分 公開
[将来の終わりITmedia]

 在宅時間の全国的な増加に伴い、人々のコンテンツ消化のかたちは大きく変わった。Webやスマートフォンアプリを介した短尺動画の需要は依然として勢いを強め、配信プラットフォームの会員数は急拡大を続けている。しかしこれらとは違ったかたちで著しい発展を遂げているジャンルがある。それがゲーム実況、なかでもとりわけバーチャルYouTuber(VTuber)と呼ばれる配信者たちの台頭だ。

VTuber黎明期 作り込まれた短尺動画

キズナアイミライアカリ キズナアイ(左)、ミライアカリ(右)

 2018年前後のVTuber黎明期、「キズナアイ」や「ミライアカリ」といった名前を聞いたことある人も多いだろう。3Dモデルを用い人体の動きをトラッキングすることで、アニメキャラクターが人間らしく動いているような感覚を与えた彼女たち。当時、その活動形式は他のYouTuber同様、数分〜10分程度の短めの動画投稿をメインとして活動していた。年々大きくなっていったiPhoneをはじめとするスマートフォンの画面サイズはついに5インチ程度が標準となり、通勤・通学の合間や寝る前のちょっとしたスキマ時間に見るには最適の再生時間。彼女たちはSEやテロップなど演出編集も行われたそれこそ「見やすい」動画を投稿し、瞬く間に人気を集めていった。伸び続けるチャンネル登録者数に比例して「案件」と呼ばれる企業タイアップの動画投稿も行われるようになり、新作ゲームの紹介やキャラクター性を生かしたライブイベント等、多岐にわたる活動を続けていた。

 それから約4年。現在、VTuber業界のメインストリームで活躍している「にじさんじ」(運営:いちから株式会社)や「ホロライブ」(運営:カバー株式会社)といった事務所に属するVTuberの活動形態は、従来の動画投稿者と大きく異なる。彼らが投稿している動画は平均して1時間程度から、長いものなら6時間を超えるものも珍しくない。それは現在のVTuberの主流が生配信であり、視聴者はそれに対してリアルタイムでコメント・スーパーチャット(投げ銭)によるコミュニケーションを行う……という形態にシフトしているからだ。

「生配信」にシフトしたVTuber

 彼らの活動が多めになるのは夕方〜深夜帯、多くの配信者についてゲーム実況がメインコンテンツとなる。APEXやbeatmaniaといった「魅せプレイ」が映えるゲームから、steamで販売されている海外のニッチなインディーゲーム、ホラーゲーム。そしてもちろん、桃太郎電鉄やポケモンなどの全世代に人気のIPや、課金が重要視されるスマホゲームも人気コンテンツの一つだ。これらに視聴者とのコミュニケーションが重視される雑談配信やTRPG、「企画」と呼ばれるバラエティ番組のような形態のものが加わるかたちとなる。

 通常の社会であれば、これらのライブ配信を追いかけるのは難しい。毎日のように投下される数時間のアーカイブ、深夜に同時多発的に開始される雑談、記念枠、ご報告、新作ゲームに対する反応、新衣装お披露目……。にじさんじとホロライブに限っても、所属する配信者は計150人ほどになる。とてもではないが1日が24時間で足りるわけがなく、主な動画の視聴時間である通勤・通学電車の中や、夜眠る前の少しの時間では追い付きようがない。主にファンが作成する「切り抜き」と呼ばれる動画(配信から面白シーンを文字通り「切り抜き」、字幕や演出を加えて見やすくしたもの)を見るのがせいぜいだ。

 ただ、リモート講義がメインとなっている大学生や在宅勤務の社会人など、家での時間を過ごさざるを得ない人にとってこれらの長時間配信は非常に消費しやすい。彼らの活動のメインとなるゲーム実況は、重厚な映画やアニメのように常に画面に集中しておく必要がなく、ラジオ感覚で流しておくのに非常に適している。また面白そうなところを見逃したのであればすぐさま巻き戻せる上に、コメントを利用した双方向性も楽しむことができる。

 このようなゲーム実況の歴史は意外と古い。広く知られているところではニコニコ生放送(08年〜)、それ以前でもWindows Media Encorderを使用したストリーミング配信を2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のスレッド上で実況する「なんでも実況V板」の各種スレッド(05〜06年)、またpeercastやlivedoor ねとらじ、Livetubeなどのツールを用いたWebラジオに近い実況は、15年前ほどより多数存在していた。配信用プラットフォームが日々現れては消えている近年でも、個人でのゲーム生放送主は多数存在しているが、そこにはVTuberと異なる点がいくつかあげられる。中でも大きいのが、コラボ配信の多さだ。

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