今、オフィスの概念が揺らいでいる。勤務体制がリモート主体へと移行するに伴い、所有面積の縮小、そして移転に踏み切る企業や、固定席を廃止してフリーアドレス化を導入する企業など、オフィス改革に向けて各所で試行錯誤が続いている。
そんな中、2021年4月にSaaS事業などを手掛けるショーケース(東京都港区)が、地方で働くITエンジニアをフルリモートで採用するという「全国フルリモート採用」をスタートした。すでに福岡県在住のエンジニアが、本制度を利用して入社しているという。
フルリモートを地方採用にまで拡大できたのにはワケがある。同社はコロナ禍でリモートワーク率95%を実現し、現在まで維持しているのだ。そこに至るまでには、暗中模索の1年間があったという。コーポレート本部人事部で部長を務める山田剛氏に話を聞いた。
全国フルリモート採用は、面接はもちろん、入社後もリモート環境下で働けるという革新的な取り組みだ。日本は今、あらゆる業界がデジタル化に向けて過渡期を迎えているが、一方でシステムを組むITエンジニアは人材不足の傾向にある。ショーケースも「一年中、人手が足りず苦労していた」と山田氏は話す。そんな中で、独自に「地方ITエンジニアのキャリアに関する意識調査2021」を実施。すると、およそ7割の地方在住ITエンジニアが「現在の居住地から離れたくない」ものの、約8割が「東京企業のフルリモート採用に関心がある」という回答が得られた。
「採用マーケットを広げ、全国にいる優秀なITエンジニアと出会えることは、事業の拡大に直結します。意識調査と並行して、3月には募集をスタートしました。反応は想像以上に早く、リリースを出した頃には内定者が出ていました」と山田氏。調査結果通りのニーズを拾うことができていると話す。
首都圏で出会えないなら全国から探せばいい――とは当たり前のことかもしれないが、実際は面倒な課題をはらんでいるように思える。しかし、全国フルリモート採用に当たって議論したのは「小一時間のミーティング1回分くらい。新入社員へ共有できるリモートワーク勤務規定はすでに整っていました」と山田氏は話す。そのような環境を構築するまでには、どのようなプロセスがあったのか。
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